愛する彼女と晴れてカップルに
メ:新学期が始まって1週間経ったくらいのとき、夜中に試験勉強をしていると突然リサが寮の前まで来たんです。深夜にいきなり来たからびっくりしていると、真剣な顔で私のことを見つめながら、「恋人と別れた」っていわれたんです。
メ:別れたという報告を聞いたあと、私は「そうなんだ」くらいの返事しかしませんでした。なんせイギリスには日本と違い、はっきりと告白する文化がほぼありません。その場の雰囲気というか、ふたりの関係性で今後カップルになるかどうかが決まるので、私は流れに任せようと思っていたんです。そしたらリサから「私のことどう思っている?」って聞かれて。
赤:恋人と別れたばかりなのに、結構グイグイきますね。
メ:確かに、そうですね(笑)その勢いもあったかと思うのですが、ちゃんとデートの期間もあったし、私も実際にリサが好きでだったので、素直に「好きだよ」って答えたんです。
赤:アイラブユーですか?
メ:いえ(笑)「I love you」というセリフですが、現地では結構ヘビーなニュアンスの言葉なので、付き合っていてもあまり使いません。交際中にいうと、「あなたとの将来を考えている」というような意味に取られることが多いと思います。
赤:そうだったのですね。勝手なイメージで欧米の方は言うものだと思っていました。
気遣いができてパートナーを大切に思う彼女をとても愛していた
赤:リサさんと付き合ってみて、日本とは違った一面を感じたことはありましたか?
メ:リサはとても優しくて親切で、私をお姫様のように扱ってくれたことを覚えています。ドアを開けておいてくれたり、イスを引いて座らせてくれたりすることを自然にできるところが、日本とは違うなと感じました。
赤:性別を問わず、大切に思う人に対して心からの気遣いをするってことですね。とても素敵です。
メ:あと、リサはとてもロマンティストでした。ある日、セント・ジェームズ・パーク(St James’s Park)へピクニックに行こうと誘われたんです。この公園は王立公園でとても広く、バッキンガム宮殿や国会議事堂に囲まれた公園です。
赤:王立公園って、普通の公園とは違うんですか?
メ:王立公園というのは、もともと王家が所有していた土地でそれが一般人も入れるようになった公園のことです。たしか王立公園はイギリス国内だと全部で8つあったと思います。セント・ジェームズ・パークは王立公園のなかで最も古く、湖の向こうにバッキンガム宮殿が見えるとてもいいロケーションの公園なんです。
赤:春にピクニックってとても憧れます。日本の春は花粉がすごくてピクニックどころではないですからね…
メ:そうですよね。イギリスにいるときはスギ花粉と無縁でした。公園では陽気な日差しの中、大きな木の下に座って、彼女は私に英語で、インドの愛の詩を朗読してくれました。たしか、タゴールの詩でした。
赤:ロマンティク…!愛の詩なんて朗読してもらったことない…。
メ:私も初めての経験でとても感動して、やっぱりこの人を好きになってよかった、あの誕生日パーティーでの一目惚れは正しかったんだって思いました。公園も緑いっぱいでとてもリラックスできましたし、彼女も気に入って「またふたりで来ようね」と、肩を寄せ合ってくすぐったく笑いあったことを覚えています。