娘の希望を尊重した園選び
引っ越してからの3カ月間はのんびりと過ごしました。夫も私も本格的に地元を離れたのはこれが初めてでもあり、お互いに開放感であふれていました。
私たちが住んだ場所は交通の便のよいところで、役所の手続きや買い物が車で15分圏内のところばかり。また家族連れで楽しめるダイナミックな公園や動物園があちこちにあり、無料で利用できるという子育て世代にとってはとても充実した環境でもありました。
さて、4月からは娘を幼稚園に通わせることにしました。「娘といっしょにいたい」という思いはあるものの、「ひとりっ子なので子ども同士の体験もさせてあげたい」という思いもある。
だから、できるだけ希望とする小学校のスタイルに近い幼稚園で、そのなかでも娘が1番気に入った園に通わせることにしました。
その園は少人数で、娘の年中さんクラスは7人だけ。しかも全員男の子。園側から「男の子だけで本当にいいのですか?」と何度も確認を取られましたが、娘が希望したところなので、「何か縁があるのだろうな」と思い入園を決めました。
とてもアットホームな園です。自然と楽しむ活動がたくさんあったのと、音楽教育に力を入れているところも魅力的でした。クラスの男の子で物静かな子がいて、その子と仲良くなって4月は楽しそうに通っていたのです。
娘の泣き叫ぶ姿に限界を感じた
しかし、5月に入ってからスイミングの授業が始まりました。週1回、近くのスイミングスクールに行ってコーチから本格的な指導を受ける授業です。
新潟の保育園ではそもそもスイミングなんてなかったし、そこではゴーグルなしで水の中に入るなんて決まりもありました。娘にとっては、それが本当に恐怖だったようなのです。
親は2階の観覧席から授業を観覧することができるのですが、娘はいつも怯えていました。泣いていることもありました。
最初のころは騙し騙しでなんとか授業を乗り切っていたのですが、そのうち、スイミングのある日は「お腹が痛い」といって休むようになりました。それでも年中さんのときの先生はいろいろとフォローもしてくださって、行ったり行かなかったりでした。
年長さんになって先生が変わると、「年長さんでしょ!」と無理やり授業に参加させられ…毎度2階の観覧席まで聞こえる声で泣き叫ぶ姿に私自身も見ているのが辛くなってきました。
娘はゴーグルをつけたらプールに入ることはできるのです。ですが、先生は「海や川で突然何かあったときでも、パニックにならずに自分でなんとかできるようにするための練習でもあるのです。だからゴーグルは絶対にダメです」といいます。
それは、とても理解できました。でも、こんなにも嫌がっている子どもをそこまでしてやらせようとする、そこになんの意味があるんだろうと思ってしまったのです。