名前と「No」はいっしょに使っていい
うちには「マセ」(マセラッティー)という名前のボクサーと、「ハマー」と、「マナ」がいます。この3匹、マセの「マ」、ハマーの「ハ」、マナの「マ」…どれも母音の(あ)です。しかも、最初の音にストレスが掛かる。犬にとっては、「マナ」も「マセ」も、「ハマー」も、同じなんですよ。
「マセ!」というと、マナも反応しますし、「ハマ~!」といっても、マセは反応します。つまり、母音の最初の音以外の他の音は、どうでもいいわけです。では、どうやってうちの犬たちは、「あ、自分のことではない」と、理解するんでしょうかね?
それは、「目」ですよ。私がハマーを見ながら、ハマーに向かって「ハマー」と呼ぶわけですよ。マセもマナも反応して私を見ます。が!私の目(視線)は、ハマーに向かっているわけですから、「あ、あいつのことか…」とわかるんですね。
名前にだって、これらを意識してつけるということは、保護犬を扱っていた当初から私はやっていて、多頭で多くの犬を扱う場合、母音の聞き取れやすい名前、名前の最初にストレス(アクセント)が強く掛かる名前を意識的につけています。
マセ、ハマー、マナ…これら3匹の犬が、私の「あ」の母音の音によって、一瞬でも私に意識が向くことは、実に有難い。
名前と「NO」をいっしょに使わないようになどと、躾け本には書いてあります。名前が「叱られる」ということと関連づかないようにと書かれているんでしょうけど、この諸説真向から否定します。私は、「マセ!No!」を使います。
犬の意識をこちらに向かせるための母音の音、「マ」を使います。そして「No」という音を使います。「No」を理解していることが前提ですが…。そもそも、「No」を理解していない犬は、「No」という音だけで行動と関連づけができません。ただの「音」ですからね。
「No」と刺激(感覚に届く刺激)はワンセット。音と刺激により、関連づけができるわけですから、音だけでは犬の経験として残らないわけです。
「No」という言葉も、名前も、犬にとっては「音」に過ぎません。その音(これも刺激の1種)とその後に起きることを関連づけることが大事であって、名前という音と「No」という音は、犬にとって同じであるわけですから、「名前とNoをいっしょに使うと犬が混乱する」という理論は成り立たちません。
飼い主もわかろうとする努力を
難しく考えてしまう必要など全くなく、音を感じる、音を理解するのが犬であると覚えておいてください。言葉の意味ではなく、音。犬は音だけで、いろんなことを伝えようとしています。
「あいうえお」だけです。口の作りや、マズルの長さ、骨格によって、音の高さは違いますけど、「あいうえお」で、必死に伝えようとする姿は、可愛いもんですよ。
犬と意思の疎通を行いたければ、犬が理解している音、犬の発する音を、よく聞くことです。声の大きさではなく、「波調」(周波数)、濁音、母音、これら私の観察と経験でわかりえたことですから、一般の躾け本などには書かれていないと思います。
きょうから「犬語」を使ってみてください。「ア”」「オ”」「ヴ」で、犬がどう反応するか。犬に言葉を理解させようとばかりするのが、飼い主です。
犬にトレーニングを施し、犬をなんとかしようとばかりする…。犬は、人間を知ろうと頑張ってます。だから、人間(飼い主)も同じように、犬の「あいうえお」をわかるようになる努力を惜しまないでくださいませ。
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