「勝てる戦いをする」という決意
M:ニューヨークに飛び立ち、目当ての経営専攻の2校の見学が終わったとき、ミュージカルライティングコースのオープンキャンパスも見学できることを知って、面白半分で授業を受けたのが運命の瞬間!
この授業は脚本家専攻と作曲家専攻がペアになり、教授から出されたお題に沿った5分程度のミュージカルを創作し発表するという、まるで大好きなミュージカル映画『glee』をそのまま抜き出した世界だったの!
そこからは脳がフル回転しちゃって、ミュージカルをビジネス側から支えるより、制作側に回った方が戦えるかも。数字を読み解いて戦略を立てるより、物理的にずっと考えながら脚本を書くことの方が私にできるかもしれない。ミッキーを人気にさせる投資家たちは大勢いるけれど、それを生み出したウォルト・ディズニーは唯一無二。その方面で戦う方が勝てるかも。
そして、この授業を2年間受けられるなんて!しかもこの専攻で日本人卒業生の前例がなく、「日本人初になれる」という私の心の何処かにあった欲望が掻き立てられて、いまに至る感じだよ。言葉通り、授業に魅了されたって感じだね。
O:これまでの運と努力もすごいけど、決断力というか直感力、戦う場を選ぶ戦略的思考もすごいね。
M:30歳までに留学に行けなかったら諦めようと思っていたから、目標校を設定してからは英語漬けの毎日。ダンナには「英語の勉強をするから家事はしない」と宣言して(笑)。
O:本当にいい旦那さんだね。全面的に応援してくれて。
M:本当にね。そのあとは着々と入学試験の課題をこなして、面接をしてという流れだったよ。
オタク姿で「勝ち」にいく
O:芸術系の学校の面接ってどんなの?全部英語だよね?
M:そう、全部英語なの。動機やこれまでの経歴を聞かれるのはわかっていたのだけど、そのあとはフリーの会話。まずはネイティブも受験する大学院で「どうすれば面接で勝てるか」を戦略立てしたの。相手の質問に答えるだけだと、語学力で負けてしまう。自分の魅力をどう発信するか試行錯誤を重ねてみた。
O:質問ベースでの面接形式を打ち破ったってこと?
M:そう。まずは『ちびまる子ちゃん』のリュックを背負って、そこにプロデュースに携わったテディベアをつけて。
O:それはちょっと…クセのある格好かも。
M:大丈夫、そういう人NYにはたくさんいる。それで絶対に面接官が知っているであろう「ジブリってご存じ?」と逆質問して、日本のアニメに話を持って行ってオタク知識を披露。最終的には私がプロデューサーとして制作面でも投資家としても経験し、その結果、今度は自身が0から物語を組み立てる人材になりたいことをアピールした。嘘つくことなく正直に。
O:一筋縄ではいかない面接だったのだね。でもそのアイデアと行動力に脱帽する!結果的にNY行きの切符を手にしたけど、このコロナの時期は気にしなかったの?
M:気にしないといえば嘘になるかもしれないけど、入学に必要な英語力に達したのがこのタイミングだったから、受けよう、入学しよう!という感じ。もちろん、コロナ対策はしっかり行ったよ。
O:夢を果たすのに外的要因は関係ないってことだね。なんだかとっても勇気をもらえます。