Z世代の結婚観に転機が訪れたコロナ禍
他人事のように分析してまとめている筆者も、前述の通り1996年生まれのZ世代。そのなかでもミレニアル世代と年齢は近く、友人もミレニアル世代が多い。完全なるZ世代とは言い難い立ちにいる感覚だ。
最近、私を含めZ世代に大きな転機が訪れたと感じている。それは、コロナ禍だ。
おおよそ2020年初頭から始まったコロナ禍。人類が太刀打ちする術を持ち合わせていない出来事のおかげで、私たちZ世代の結婚観に変化が現れた。
世界は、アメリカの心理学者であるアブラハム・マズローの六段階欲求でいう「生理的欲求」と「安全の欲求」を満たすために生きることを余儀なくされた。それは、安全に暮らしを営むことだ。ウイルスにかからないために家のなかにこもる。それさえ守っていれば、私たちの命は守られる。
「不要不急」といういままで使ったことのない言葉が日本中を飛び交い、安全に生きること以外は不要なものだとされ、そのなかに含まれていた自由な恋愛(たまたま入った居酒屋の隣の席に座っていた彼が運命の人だったり、朝の会議中よく目が合う上司と付き合ったり…という人と人とが出会うことで実現可能な恋愛)が制限され、同棲していないカップルは遠距離恋愛でもロミオとジュリエットでもないのに、会いたくても会えない状況に追い込まれた。
コロナ禍のZ世代は、新卒2年目〜大学生や高校生など恋愛したい盛り。結婚なんて先の話だと思っていた私たちだが、急に結婚というものに価値を感じるようになった。
社会人Z世代においては、誰もが憧れる業界に入社したもののコロナ禍の影響で業界全体が転覆し、給料カットにボーナスゼロとなったものがいる。先行き未定の仕事に就いたばかりの新卒Z世代は、自分の生活で手一杯となった。
コロナ禍だからこそのアイデアで起業するものもいるが、フリーランスで外注案件をこなしていたものは、どこか勤め先はないものかと就活を始めたりもしている。
仕事とプライベートをしっかりと区切ってプライベートも充実させるという、そのプライベートを充実させるためのお金も、場所も、人との関わりも制限されるなか、法律に守られた結婚という形がまた価値を見出しいてきたのだ。
コロナ禍以前は、籍を入れるという法律に守られた結婚ではなく、形にとらわれない自由な結婚を好む傾向があったが、コロナ禍に入り状況が変わってきた。
会いたいのに会えなかったり、経済的にふたり暮らしが安全だったりする状況下で、両親に同棲を認められていない人などは結婚に踏み切る。そして、SNSなどには結婚したカップルの日常があげられる。
ひとり寂しく家にいるしかない人は、そんな堂々と一緒にいられる夫婦の姿を見て“正式に認められたカップル”という感覚を持つのだ。
多くの人のリアルな声がタイムラインに流れてくるSNSが身近にあり、どの世代よりも現実的であるZ世代がコロナ禍で痛烈に感じたこと。それは、平日は仕事優先だから週末だけ会えればいい、籍を入れなくても結婚しているのと同じ、という自由な発想は安心・安全が当たり前の状況で言えたことだということだった。