1.彼女との関係を偽らなければいけない
これはカムアウトをしていない間柄であれば会社以外でも起こることなので、心あたりのある当事者は多いのではないでしょうか。
休日に遊びに行った場所やクリスマスや長期休暇の過ごしかた、旅行先での出来事など「彼女と過ごした時間」について僕が雑談として話す場合、彼女のことは、友人や(一緒に暮らしはじめてからは)同居人として話しています。
本当はきちんとパートナーであると話したい。しかしカムアウトをしていなければそういった小さな嘘を何度も吐いていかなければなりません。嘘のひとつひとつは、回数を重ねれば確実に心に積もっていって、「なぜこんな嘘を吐かなければ」という思いにさせられます。
楽しい話だけではありません。たとえばパートナーの体調がよくないとき、異性カップルや夫婦であれば「パートナーの体調が悪いので遅れて出社します」など理由を偽ることなくパートナーに付き添うことができます。
僕は2年前に直属の上司にはカ厶アウトをしたので、以降は上司には嘘を吐かずに彼女に付き添うために早く帰ったりもできるようになりました。しかしカムアウトをする以前は自分の体調不良を装ったり、ほかの用事があると本当のことを隠していました。
2.お祝い事も誰にも言えない
2016年、僕は彼女とフォトウェディングをしました。もちろん籍を入れての正式な婚姻ではありませんが、ふたりで決めた人生の大きな区切り。そんな大切な日を向かえることを、僕はフォトウェディングを行う前、会社では誰にもいうことができませんでした。
社内には結婚を報告する社員ももちろんいます。彼らはみんなから「おめでとう」と声をかけて祝福され、僕も彼らを心から祝福しました。しかし心のどこかでは、僕もそのたった一言がほしかったなと感じています。
3.緊急連絡先
僕がいま勤めている企業では、就業中に従業員の身に体調不良等の緊急事態が発生した場合の連絡先を数箇所登録します。登録用の書類の記入欄には、緊急連絡先の他に電話番号が繋がる先を示す「実家・親族・配偶者」のいずれかに○をするようなつくりになっていました。
該当する項目に彼女が該当する項目がないため、僕は実家の番号と両親の携帯電話の番号の3箇所を登録しました。パートナーと暮らしている現状では、僕の身に何かあったときは彼女に連絡をしてほしいのに、彼女に直接連絡がいかないのです。
昨年からの新型コロナウイルス流行がきっかけで、「もし自分の身になにかあったら?」ということに考えが及ぶようになり、このことがとても気になりました。万が一そのまま入院なんてことになれば、身の回りのものの準備は彼女にお願いすることになるだろうし、家のなかのことや直近の僕の様子がわかるのは実家の家族ではなく彼女なのです。