どうすれば、再度離婚の同意を取り付けられる?
では、明子さんが再度離婚の同意を取り付けるにはどうしたらよいのでしょうか?
翔馬さんは、『ドラえもん』で言うとスネ夫のイメージ。上下関係に敏感で、自分より目上か目下かを察知する能力に長けています。
たとえば、目上のジャイアンに媚を売り、目下ののび太を影で叩くことで自分の居場所を確保する脇役ですが、明子さんの夫も例外ではありません。
離婚における目上の人物は、たとえば弁護士や裁判官、そして調停委員などが挙げられます。明子さんは弁護士に依頼し、夫の説得を任せれば、夫は弁護士が目上の人物だと判断し、ヘビににらまれたカエルのように縮みあがるでしょう。
しかし、弁護士に支払う報酬は明子さんにとって高額すぎました。手付金として30万円、成功報酬として養育費の2割を提示されたので、泣く泣くあきらめるしかありませんでした。
一方、家庭裁判所へ離婚調停を申し立てる場合、印紙や切手などの申立の費用は2万円もかかりません(参考:裁判所公式HP)。
そこで明子さんは離婚調停のなかで裁判所という場所で、裁判官や調停委員という夫にとって格上の相手に夫を説得してもらうことにしたのです。
明子さんを担当する調停委員は、還暦過ぎを思しき男性と女性。明子さんは離婚や親権、養育費について想定問答集を見せつつ過去の経緯…特に一度、離婚に同意した夫が翻意したことを説明したのですが、女性の調停委員は「よくできているわね」と褒めてくれ、あっという間に調停委員を味方に引き入れることに成功したのです。
ところで、同じ内容でも誰の口から発するのかで印象は大きく異なります。実際のところ、調停委員が夫に伝えた内容は、明子さんが夫に伝えた内容と大差なかったのかもしれません。
しかし、夫にとって目下の明子さんではなく、目上の調停委員に代弁してもらうことで、夫は「この人たちには逆らえない」と悟り、結局は明子さんは当初、提示した条件と同じなのに夫は調停の場で再度承諾したのです。
最初の段階で離婚が成立していれば夫、妻、そして子の戸籍には「協議離婚」と書かれているはずでした。しかし夫が途中で翻意した結果、戸籍には「調停離婚」という烙印を押されたのです。協議離婚より調停離婚のほうが「別れるときに揉めに揉めた」という印象を与えるので、見栄えが悪いのは言うまでもありません。
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