婚活サイトで幸せをつかんだ友人に憧れ、婚活をスタートさせることにしたあかね。そんなあかねに、姉から「警戒心を持って行動して」との忠告が。
疑い過ぎるのも相手に悪いと思うんだけどと言うあかねの前に現れたのは、好青年の航大さん。順調にデートを重ねる2人だったが、あかねの前に予期せぬトラブルが…!
- おもな登場人物
- あかね:この物語の主人公
- 航大:あかねとオンライン結婚相談所で知り合った男性
- 姉:あかねの姉
- 俊二:姉の夫
姉からの忠告

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「あかね。婚活するなら、個人情報はそこまで明かさないほうがいいよ」
さっきまで笑顔だった姉は、突然真剣な表情で私のほうに向き直った。
「どういうこと?」
「だから、住所とか、会社とか。隠しておいたほうがいいよ」
ことの発端は3日ほど前。友人が婚活サイトで知り合った男性と結婚したのだ。
もう29歳、来年はいよいよ30代。このままおひとり様を楽しむぞと思っていたのだが、友人の幸せそうな姿を見て「婚活サイトに登録してみるだけ、してみようかな」と思ったのである。
さらに家が近所でよく遊びに来る姉に婚活サイトのことを話したところ、姉も夫との出会いがマッチングアプリだったと明かされた。
「でもお姉ちゃんはさ、そこで俊二さんと出会ったわけでしょ?」
「私だってめちゃくちゃ慎重だったよ。やっぱり顔も知らない人に会うんだから警戒しないと。俊二とだって昼間しかデートしなかったし、嘘の最寄り駅教えてたもん」
「ふーん」
たしかに、ネットで知り合った人との出会いには気をつけなきゃいけないことがたくさんあるだろう。それは重々承知している。
「素敵だなって思う人でも警戒しなきゃダメ?疑い過ぎたら相手に悪いと思うな」
「あのねぇ、そういう人の良心を利用してよからぬことをたくらむ人って一定数いるんだよ。自分の身体を守れるのは自分だけ!警戒しすぎてダメなことなんてないから。あかねはとことん気をつけるべき」
たしかにな、気をつけなくちゃ。そんなことを思っていた私に、いまこうやって言ってやりたい。「もっと真剣に気をつけて、危険ってゴロゴロ転がってるよ」って。
運命の出会いは突然に…

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登録したのはオンラインの結婚相談所。1週間ほど、会員のプロフィールをポチポチ見続ける日々が続いていた。そのなかで私は「航大さん」という男性と知り合った。
サイクリングや映画鑑賞など私の趣味と共通していて、なおかつ年収もなかなか。実家暮らしという点がネックだが、それ以外は申し分ない。
私たちはあっという間になかよくなり、知り合って1週間後にデートの約束をした。
「あかねさん。きょうはありがとうございました、急に誘っちゃったのに」
初デートは街中のおしゃれな創作料理屋さん。最近雑誌で話題になっていたお店で、ずっと行きたいと思っていた。
航大さんは私のそんな話を聞いてすぐに予約を取り、デートに誘ってくれたのだ。
「いえ、むしろこっちこそ…!ずっと行きたかったお店だったのでうれしかったです」
それに、話も楽しかった。初めて会う男性、しかも婚活サイトで知り合った人。姉の忠告があったせいかとても警戒していたが、メッセージの印象通りの好青年だった。
どんな話もニコニコ笑って聞いてくれる聞き上手。しかも知識が豊富でいろんな話題を振ってくれるから会話がちっとも止まらない。たまにちょっと冗談を言ってくれて、ユーモアもばっちり。
「あの、よかったらまたデートに誘ってもいいですか」
航大さんが緊張した面持ちで、まっすぐ私を見つめて言ってくる。
「もちろんです…!」
ドキドキする胸の高鳴りを抑えながら、私は航大さんと電車に乗る。
連絡先を交換し、次は直接やり取りしようねと話す。サイト外でのやり取りなんて、交際前提の関係なのも同然じゃないかとつい浮かれてしまう。
電車が最寄り駅へと近づいていく。もうお別れなのかなと思うとすこししょんぼりしたが、またデートに誘ってくれるからという喜びがすぐに打ち消してくれた。
「じゃあ私ここで降りますね」
最寄り駅のアナウンスが聞こえ、航大さんにペコリとお辞儀をする。
「わかりました、また連絡します!お気をつけて!」
ドアが閉まるまで、私は航大さんに手を振り続けた。次はどこにデートに行けるかな。そんなことを考えていたら、自然と口角が上がってしまった。電車を降りてすぐ、航大さんから連絡がきた。
『気をつけて帰ってね、またね』