性別を取り払って考えてみる
次はこの男女の差以外の部分で、なぜ怖いと感じるのかを考えてみます。
冒頭で「ゲイに言い寄られて、ヤバいと思って慌てて逃げた」と話していたかたは男性で、女性を恋愛対象としていることを公表しています。
恋愛対象と性対象が一致しないかたもいらっしゃるので一概には言えませんが、異性愛者のかたの多く(年齢を問わず後天的に同性を愛するようになるかたもいらっしゃるのでこう書かせていただきます)は、同性愛者との恋愛や性行為を望んでいない場合が大半かと思います。
望んでいない相手からの好意や性欲、特に後者に関しては急に向けられると恐怖感に繋がりやすいのではないでしょうか。
前述のとおり僕の身体の性は女性で心の性は定めておらず、恋愛・性対象の大半は女性です。
学生時代アルバイトをしていた際、同僚の男性が僕に好意を寄せてくださっていたことがあり、断った際に粘られ、困った経験がありました。
好意自体はありがたいものの、すでに恋愛対象が女性にかなり向いていて、そのうえその男性のことは同僚以上とは考えられなかったので希望に応えることはできません。
最終的には僕が気持ちに応えられないことを納得してくれましたが、当初彼のなかでは僕も彼のことが好きである前提で話していたと知り、さすがにそれは「怖い」と感じました。
このときの相手が男性だったから怖いと感じたのかもしれませんが、もしも相手が女性であっても、勘違いのまま突き進まれたり強引なアプローチを受けたとしたら怖いと感じると思います。
「ゲイに言い寄られて、ヤバいと思って慌てて逃げた」と話した男性は、ゲイの男性から好意や性欲を向けられるとは思っていなかったのではないかと思います。
僕も同僚の男性のことはあくまで同僚としてしか考えておらず、かつ特別扱いや思わせぶりな行動も特にしたつもりもなかったので、まさか自分に好意を寄せられるとは思っていませんでした。
言い方はよくないかもしれませんが、望んでいない相手からの好意や性欲は「怖い」と感じるのではないかと思います。
性別は関係ない
僕は同性愛者に言い寄られて「怖い」と感じたと言うな、とは全く思いません。
言い寄られた際、本当に身の危険を感じたのであればそれは性被害の未遂であったと考えてよいでしょう。性被害を訴えるのに自分と相手の性別は関係ありません。
ただし、被害を受けた・受けそうになったことを面白おかしく話してしまうと、今回の場合で言えば男性から男性への性加害の声を上げにくくなることにも繋がってしまいます。
被害を受けたことの告発や声を上げるのは、女性も男性もとても難しい。だから少しでも声を上げやすくなってほしいのです。
しかし、もしも向けられた好意が自分と相手との関係性で真剣で真摯だと感じられるものであったり、カムアウトをされただけである場合は相手に向き合ってもらえたら嬉しいです。
好意に応えることができないのは、異性愛者同士であっても往々にしてあること。好意を断ることは問題ありません。
ただ、断る場合も異性愛者の自分と同性愛者の相手ではなく、自分と相手、人と人として異性からの好意を断る際と同じように話していただけたらいいなと思います。
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