夫婦の言い訳とは
「その奥さんは町内会の副会長をしていたことがあって、町の治安にはうるさいところが少しあります。電話で『町内会長にも話しておこうか』と言っていて、さすがにそこまではと思ったけれど、まずはご夫婦と話そうとなったのは正しいと感じました」
そこのお隣に住んでいる人などはどう思っているのだろうと小田さんは考えましたが、夕方になってまだこの状態なら誰も何も言っていないのではとも思ったそうです。
十分後、再度その奥さんから電話がかかってきます。
「『年に一度のことなのだから、大目に見てもいいのでは』ですって。旦那さんのほうが。鬱陶しそうな顔をされて、私より夫のほうがカチンときていたわ」
語気も荒く飛び出す奥さんの言葉に、小田さんも絶句します。
「あの様子だと、たぶんほかの家からも苦情が来ているわね。またかって感じで面倒くさそうにしていたけど、『掃除をしてください』と言ったら『いまは手が離せないので後で』って、さっさとドアを閉めようとするのよ。酔っている感じがしたし、何をしているのかしらね」
怒りを隠そうともせずそう続ける奥さんは、「やっぱり町内会長に話すね。もう誰か言っていると思うけれど」と小田さんに伝え、電話は切れました。
「年に一度なのだから大目に見ろって、問題を起こした人が言う言葉でしょうか。普段はにこやかに話す旦那さんを思い出したら、豹変ってこういうことか、とゾッとしましたね。豹変というかこっちが本性だとしたら、これからのお付き合いも考え直さないといけないなと思いました」
トラブルで見えてくるその人の本性
数時間後に奥さんから受けた報告で、町内会長がそのお宅まで訪ねていき改めて注意したことを小田さんは知ります。
「まともに通れない」と数軒から苦情が入っていること、前夜は若い人たちの嬌声と花火を上げる音でうるさかったことなど、奥さんの想像通り町内会長のもとにはいろいろな声が届いていました。
「私への態度を聞いて会長の顔色が変わって、それから一緒に家まで行ったのよ。そのときは奥さんが出てきたけど、旦那さんと同じく酔っ払っていてヘラヘラしながら『すみません』って。会長が『お宅のしたことなのだから責任を持っていますぐ掃除をしてください。迷惑です』って大声で言ったら、旦那さんと息子さんが出てきてね。会長が『タバコの吸い殻を見たぞ』と息子さんに言ったら青くなっていたわよ」
その場でお子さんが外に出て掃除を始めるのを、奥さんは見届けたそうです。
夫婦の様子はどうだったのか、訪ねてきたのが町内会長とわかってさすがに傲慢な態度はとれなかったのか、「大目に見るべき」の言葉は出なかったといいます。
「ご夫婦の様子を聞いて、これが本性なのだと改めて思いました。酔っ払うのが悪いとかそういうことじゃなくて、自分たちのしたことをちゃんと考えないというか、人に迷惑をかけても平気なのだなって。掃除をしたのも、喫煙を知られたことに焦ったからで、反省ではないですよね。
こんな人たちとは思わなかったので、ショックが大きかったです」
普段は飲んでいる姿など見たことがなく、声をかければ明るく答えてくれる息子さんで、こんなトラブルが起こるまで「真実」は見えないのだなと小田さんはしみじみ考えたそうです。