そこに居を構え生活を続けるからには、避けて通れないのがご近所さんたちとのお付き合い。
普段は特に問題もなく穏やかな関わりができているのに、あるときだけ異様な状態になった近くの人を見れば驚きますよね。
それが滅多にないことだとしても、周りに住む人にとって不快なものであれば、見過ごすことはできません。
ある一家はご近所さんの過ごし方にどう巻き込まれたのか、顛末をご紹介します。
「正体不明」だけど静かだったご近所さん
そこに住んでもう15年になると話す小田さん(仮名/45歳)は、一筋向こうに大きな家を構えるその一家について、「ご夫婦がどんなお仕事をされているのかはわからないけれど、道で会えばふたりとも笑顔で挨拶をしてくれるし普通に会話ができていた」といいます。
高校生のお子さんがいらっしゃるのは自転車で通学する様子を見て知っていましたが、駐車場に並ぶ高級車は日中もずっとそのままで、ご夫婦がどこかに通勤する姿や家に出入りする人もあまり見かけないことから、近所では「株か何かで生計を立てているのでは」「資産家でお金に困っていないのでは」など、憶測ばかりが流れていたそうです。
「お盆とか年末年始にも人が来ないというか一家がどこかに出ていく感じで、クルマがないから旅行でもしているのかも」と、1年に渡って動きのない家というのが小田さんの実感でした。
正体不明ではあるけれど、40代後半か50代と思われるご夫婦は身なりもきちんとしていて会えば世間話もでき、特に嫌悪感を覚えるような振る舞いはありません。
話していても自分たちのプライベートについてはいっさい情報を出さないことを、小田さんは「どんな家でも人に知られたくない事情はあるよね」と勝手に思っていました。
内情がどうであれ、問題になるような行動はなくお子さんの姿も一般的な学生さんという雰囲気なら、ご近所さんの間で不審な噂が流れることもなかったそうです。
あるお正月に起こった「異変」
その年の年末、小田さんは一家の駐車場にクルマが停まったままであることに気がつきます。
去年も2年前も、たしか大晦日の前から年明けまでクルマはなく、家にも灯りがつかなかったことを小田さんは思い出しました。
「そのときは『今年はいるのだな』と思ったくらいで、すぐ忘れましたよ。年末年始はバタバタするし、よそのおうちのこととかずっと気にしていられないじゃないですか」
年越しから元旦の夕方まで、小田さんの家族は家から出ることなくゆっくりと過ごしていたそうです。
異変を知ったのは、三軒隣に住むご近所さんから電話がかかってきたときのことでした。
「ご挨拶も早々に、奥さんが『◯◯さんのお宅、見た?』と興奮気味に話してきて。何のことかと思ったら、家の前にゴミが散乱していてひどい状態になっていると聞いてびっくりしましたね」
初詣の帰りにそれを見て驚いたというその女性は、「私はちょっと見過ごせないのだけど、どう思う?」と小田さんに確認をお願いします。
小田さんがおそるおそる家の近くまで足を向けてみると、目にしたのはまさに惨状でした。
「ジュースの空き缶にお菓子やパンの袋などが歩道に転がったままになっていました。近くに行くと花火をした形跡があって、その残骸もそのままだし、遊んだものを全部捨てていったって感じでしたね」
そのとき小田さんが嫌悪を感じたのが、タバコの吸い殻です。
ゴミの状態からして若い人たちが騒いだと感じたけれど、お子さんは未成年の学生のはずで、「決めつけるのはいけないけれど」と小田さんは喫煙の可能性を思い浮かべます。
何より、それが大人が吸ったものだとしても吸い殻をその場に捨てるようなことはあってはならず、もしこれが目の前の一家のしたことなら責任を持って片付けてほしいと思いました。
ひとまず帰宅してから改めて電話をかけた小田さんは、どんな様子かわかったこと、ひどい有り様で迷惑だからご一家に一言注意したほうがいいのではと伝えます。
「そうよね」とうなずいた奥さんは、「いまから夫と行ってくる」と返し、通話は終わりました。