そこに住んでいれば、ご近所さんや地域の人々との交流が生まれます。
それが楽しいものならいいけれど、一方的な関わりで圧力をかけてきたり、望んでもいないことを押し付けてきたりする人には要注意。
ストレスを少なくしてそこに住み続けるには、自分のスタンスをしっかりと示していくことも大切です。
ある女性は、自分のしたいことにこちらを巻き込むご近所さんにどんな対応をしたのでしょうか。
「地域のための活動」を推す会長
ここに住んで10年以上になるという朝子さん(仮名/49歳)は、それまで近くに住む人々とは上手にお付き合いができていたと言います。
朝子さんが引っ越してきた当時は町内会の活動がそこまで盛んではなく、義務になっているのは会費の支払いと3カ月に一度の溝掃除くらいで、「町内会長がどなたかも把握していなかった」そうです。
近所の人たちも同じく町内会に強い関心は持っておらず、会費を徴収する当番になったらお隣さんが一緒に回ってくれるようなゆるい関わりで過ごせていました。
それが変わったのが1年ほど前。それまで教育関係の仕事に従事していた50代の女性が町内会長に名乗りを上げ、「これからは地域の人たちの団結が大事」と言い出してから。
「彼女が会長になってから、それまで定期的な活動は溝掃除くらいだったのが、公園の清掃や子どもたちの登下校の見守りなどが加わりました。会のメンバーと話し合って決めたそうですが、回覧板で文書を読んだときは突然だなと思いました」と朝子さんは言います。
仲のいいお隣の女性は、「するのはいいけれど、強制だと困るわね」と肩をすくめていたそうです。
地域のための活動は、住んでいるのならたしかに大切なことだとわかるし、自分もできる範囲でお手伝いはしたい。朝子さんはそう思うものの、椎間板ヘルニアを患っているため無理ができないことも考えていました。
こちらの状態を理解しない姿に…
「活動は基本的にボランティアで、できる人がするのが基本でした。若い世代の人はみんな仕事をしているし、家にいても私のように体や家庭に事情があって外に出られない人もいますよね。
強制じゃないとわかってお隣さんとはよかったねと話していたのですが、ふたりで出かけられるときは行こうと決めました」
朝子さんの体を気遣うお隣さんは、無理せず動けるときに参加することを提案してくれたそうです。
あるとき、その町内会長が朝子さんの家を訪れます。
自分が書いた文書は読んだか、ボランティアに参加できそうかの意思確認で来たと言う会長に、朝子さんは自分の病気について話し、「大丈夫なときは掃除などやりますので」と丁寧に伝えたそうです。
ところが、会長の返事は「ここに住むのならボランティア活動は義務ですよ」という、それまでのやり取りを否定するような言葉でした。
「義務なのですか?」と朝子さんが驚いて尋ねると、「ほかの住民のかたは活動に賛成してくださって、今朝も数人が交差点に立って子どもたちの見守りを行っています。負担が偏るのはちょっと…」と会長は眉をひそめたそうで、「私のヘルニアを、活動から逃げるための嘘と受け取ったのかもしれません」と朝子さんは振り返りました。
骨折などと違い外見からはわかりづらい病気は、説明しない限り大変さを知ってもらうのは難しいことは、朝子さん自身これまでの経験で把握していました。
「それで、ヘルニアになって5年以上通院していること、通っている病院や飲んでいる薬についても話しました。主治医から安静が大事と言われていることも伝えたのですが…」
「ヘルニアって、いつも痛いのですか?」と会長から尋ねられ、何が何でもやらせる気なのだと朝子さんは落胆したそうです。
体調がいいときは必ず参加しますので、と繰り返してその場は終わったものの、会長の「ほかの人はみんなやっています」と圧力をかけるような言い方が気になって、朝子さんはお隣さんにこの日のことを話していました。