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こんにちは、椎名です。僕は身体の性が女性で心の性は定めていないセクシュアルマイノリティで、女性のパートナーと生活をともにしています。
2022年3月、本人の同意なく性的指向を第三者へ暴露をする「アウティング」が原因の精神疾患が、おそらく日本で初めて労災認定されました。
家族や友人間だけでなく、会社で同僚などから受けることも考えられるカムアウト(自らがセクシュアルマイノリティであることを告白すること)。
今回はカムアウトを受けた際に気をつけたい、「アウティング」について考えます。
「アウティング」原因が労災認定に
都内の保険代理店に勤めていた20代のセクシュアルマイノリティの方は、職場で本人の同意なく性的指向を暴露する「アウティング」を受け、精神疾患を発症。
この件は、おそらく全国で初の「アウティング」による労災認定されました。(参考:NHK)
この方は2019年に該当の保険代理店への入社時に、緊急連絡先として同居している体の性が同性のパートナーがいることを会社へ報告。
その際伝えるのは必要のある正社員に限るとしたにもかかわらず、上司はおよそ1カ月後にパート従業員に対し男性の性的指向をアウティングしました。
上司は男性へアウティングをした理由は、「自分で言うのは恥ずかしいと思ったから言っておいた。1人ぐらいいいでしょ」と説明したそうです。
これにより男性は上司のことを信頼できなくなり、社内での必要なコミュニケーションが取れなくなるなど関係性が悪化、精神疾患を発症し2年後に退社しました。
男性は前述の通り労働基準監督署へ労災を申請し、精神疾患の原因がパワーハラスメント(アウティング)として2022年3月に認定されたそうです。
現在までに会社側は男性に謝罪し、解決金を支払い済み、今後の再発防止として社員教育の実施を約束しました。
「アウティング」とは?
他者の性的指向や性自認を当事者本人の同意を得ないまま、第三者や不特定多数へ口外(暴露)したりSNSに書き込むことを言います。
アウティングが原因で関係性が悪化やいじめなどが起きる可能性が考えられ、前述の労災認定されたケースのように、アウティングをされた当事者が精神疾患を発症したり、最悪の場合自死を選んでしまう場合も考えられます。
「暴露」と言ってしまうと当事者の性的指向や性自認を話のネタにして貶めようという印象になってしまいますが、アウティングは必ずしも悪意をもって口外した場合に限りません。
「ほかの人に言い難いだろうから代わりに言ってあげよう」や、「周囲の人たちもこのことを知っていた方が本人も過ごしやすいだろう」といった場合も本人の同意がなければアウティングです。
アウティングしてしまった側がよかれと思っても、本人がそれを望むかどうかは別の問題。あまりないケースですが、本人から依頼がない限り第三者へ口外することは控えるべきです。
筆者も大学生のころにアウティングをされた経験があります。
アルバイト先の仲のよい同僚にカムアウトをした後、アルバイト中にほかの同僚から「椎名さんって同性愛者なの?」と声をかけられぎょっとしました。
声をかけた同僚も実はセクシュアルマイノリティで、同じく筆者がカムアウトをした同僚にカムアウトしたとのこと。
該当の同僚は「同じ同性愛者がいるよ!」と善意で筆者についてそのかたに話したそうなのですが、正直嬉しいとは思えませんでした。
アウティングを聞いてしまった当事者の同僚も、「これってアウティングだよね…」と呆れ顔。
幸いほかの同僚には勝手に話していない様子で、周囲からいじめられたり関係性が悪化したことはありませんでしたが、「同性愛者なの?」と言われたときの恐怖や焦りはいまでも忘れられません。