「箱入り娘」の決断と事件
サエは、高校卒業後も県外に出ることなく、結婚するまで実家住まいをしていた筆者の地元の友人。引っ込み思案でおとなしい性格から自己主張も少なく、「誰かに付いて行くのがちょうどいい」と昔からいっていました。
サエの婚約者だった男性は、私たちの地元に転勤で来ていた大手企業に勤める会社員。付き合って1年くらいしたころ、再び辞令を受けて東京に戻るのを機にプロポーズされたといいます。
「プロポーズは嬉しかったけど、県外にも出たことのない私が大都会の東京で暮らしていけるか不安で…彼は『大丈夫、心配しすぎだよ』なんて笑っていたけど。仕事も好きだから辞めたくないし、彼と結婚したい気持ちと地元に残りたい気持ちで揺れに揺れて。最終的には上京するという決意をして、親にも認めてもたったんだけどね」
「事件」が起きたのは、両家に結婚の許しをもらい、サエが両親と一緒に住まいになる予定だった家を見に上京したときのこと。
「彼の実家の隣に、以前は彼の祖父母が住んでいた家があって、そこに住まわせてもらうことになってたんだけど…」
両親と一緒に彼の実家を訪れたサエは、あり得ない光景を目にすることになりました。
「昼過ぎに到着したら、彼のお父さんがお酒を飲んで酔っ払っていて。それだけでもビックリだけど、うちの両親、特に父に悪態つきはじめちゃったんだ。“お前は医者だからって何だ?威張るな、偉そうにするな!”とかって。彼も彼のお母さんも止めてくれようとはしたんだけど全然ダメ。うちの両親が『結婚の話はなかったことにしてもらいます』ってその場を後にするときも、ずっと暴言を吐いてた」
その後、宿泊していたホテルに戻り、サエは両親から「この結婚は認められない」と告げられます。先ほどの出来事によるショックで何も考えられなくなっていたサエでしたが、翌日やってきた婚約者の態度を見て、「この人との結婚はやめよう」と決断しました。