クィアマガジン「purple millennium」を運営し、LGBTQ当事者としての経験や考えを発信しているHonoka Yamasakiです。
いま、フェミニズムへの関心が広がりつつある韓国。大ベストセラー小説『82年生まれ、キム・ジヨン』をはじめ、さまざまな韓国文学が日本でも話題を集めています。
さらに、映画『パラサイト』や『はちどり』なども注目され、フェミニストだけでなくフェミニズムを知らない人、フェミニストを自称していない人でも、社会問題に触れ合う機会が増えてきています。
『82年生まれ、キム・ジヨン』で描かれているように、韓国では家父長制(家族のなかで絶大な権力をもつ者が男性たる家父長である家族形態のこと)や性差別、ミソジニー(女性嫌悪)が浸透している男性中心的な社会が残っていますが、それと同時に、フェミニズム運動も盛んに行われています。
沈黙を強いられてきていた人々の声がやっと表に出ることで、韓国だけでなく同じ境遇にいる外国の人たち、女性、社会的圧力に下敷きにされてきた人たちが共感し、波紋の広がりをみせているのです。
理不尽な家族制度や性抑圧へのバックラッシュが加速しているなか、家父長制に都合のいい生き方に抵抗する「4B4T運動」という言葉も誕生しました。
韓国の男性優位社会と、それに対抗するフェミニズム運動は一体、どのようにして生まれたのでしょうか。
家父長制に抗う「4B4T」とは?
昨今、日本では「結婚するかどうかは自由」という考えが広がり「晩婚化」や「未婚化」がここ数年のキーワードにもなっていますが、「30代までには結婚すべき」「この歳で独身なのは何か理由がある」「結婚して子どもを産むのがあるべき姿」といった価値観はまだまだ存在します。
実際に「まだ結婚しないのか」「もっと女性らしくいなさい」といった言葉を、当事者でない第三者から投げかけられた経験をもつ人もいるでしょう。
これらの価値観は、家父長制に都合がいいと考えられます。
実際、女性らしくいたり、従来の恋愛や結婚の道筋を辿っていれば、周りからの批判はなく、むしろ褒められる世界線ですが、本当にそれだけが幸せなのでしょうか?
個々の人権が守られ、自分の好きな選択をし、好きなように生きる社会。言い換えると、自分の人生を生きること。それが、あるべき姿なのではないでしょうか。
そういった考えをもつ人たちが家父長制の価値観に抵抗し、「4B4T運動」を行っています。
「4B4T運動」の「4B」は“しないこと”を意味し、韓国語の「非」から、「4T」は“抜け出すこと”を意味し、韓国語の「脱」から由来しています。
また、4つのBとTが示すものは以下の通りです。
- 4B:非恋愛、非結婚、非性行為、非出産
- 4T:脱アイドル、脱オタク、脱宗教、脱コルセット
結婚・出産したくない韓国の若者たち
世界銀行によると、年々韓国の出生率は低下し、2018年を境に女性一人当たり0.98に。2019年には0.92、2020年には0.84とさらに低下傾向にあるとのこと。
2019年のデータからみると、出生率はすべてのアジアの国のなかで韓国が最も低い52位であることがわかります。出生率が1.0を下回るのは韓国だけであり、2017年から年々低下をみせる日本以上に非婚出産が著しいことがわかります。
女性が結婚や出産を望まない理由はたくさんありますが、家父長制と結婚の観点からも考えられるでしょう。
米国と比べて、事実婚の少ない韓国では日本同様、婚外子(婚姻届を提出していない二人の間に生まれた子ども)の割合が低いことから、お互いが婚姻関係になったうえで子どもを育てることが通常となっています。
ですが、家父長制や性差別が前提となる婚姻制度によりさまざまな問題が顕在化されるため、非婚出産を望んでいると考えられます。