主人公・梨花と梨花の夫・陽一が、結婚1年目の記念日ディナーを終えて帰宅したのは、半年前に建てたばかりの二世帯住宅。完全分離型にしたものの、義母の干渉は少し行き過ぎていた。
これは、息子が大好きすぎる義母とひとつ屋根の下で暮らすことになった梨花に降りかかる、奇妙な事件の数々…。
第1話
- 登場人物
- 梨花:この物語の主人公
- 陽一:梨花の夫。
- 義母:陽一の母。梨花と陽一と二世帯住宅に住んでいる。
- 義母の姉(真子さん):独身。着物教室の講師で月に2度義母のもとを訪れる。
結婚1年目の特別な「プレゼント」

image by:Shutterstock
夫の陽一からの結婚1年目のお祝いは、水色の袋が有名なあのブランドの可愛いピンキーリングだった。
なかなか予約の取れないホテルの記念日ディナーを満喫し、夜景を眺めながら指輪をプレゼントされて、まるでプロポーズされてるみたいだねと笑ってしまう。
「本当にかわいい、ありがとう」
電車を降りて、家までは歩いて15分。ほろ酔いになりながら、陽一と梨花は肩を並べて帰路につく。街はすっかり寝静まっていて、街頭の明かりだけが2人を見守っていた。
「絶対梨花に似合うだろうなって思って…想像通りだった。喜んでもらえてうれしいよ。梨花もありがとう、キーケース。俺ずっとほしかったから感動してる」
陽一は、梨花がプレゼントしたキーケースを大事そうにバッグにしまう。
「梨花、改めて俺と結婚してくれてありがとう」
「ちょっと何、恥ずかしいよ」
「だってさ、10年も片思いしてたんだよ?本当に大好きな人と結ばれて、結婚できて、プレゼントまでもらっちゃって…こんな幸せなことある?」
梨花の顔をキラキラとした目で見つめる陽一は、「愛妻家」という言葉がピッタリだろう。
そうして梨花と陽一は、半年前に建てたばかりの二世帯住宅へ帰っていく。
3階建ての住宅で、1階は義父母、2、3階は陽一と梨花夫婦の住居になっていた。それぞれにキッチンや水回りの設備を備え付けているため、ほとんど完全分離と言って過言ではない。
玄関だけは同じなので、きょうのように夜遅く帰宅した際は、起こさないよう細心の注意を払わなければならないが…。
時刻は23時をすぎたころ。梨花と陽一がこっそり玄関を開けると、案の定真っ暗だった。細心の注意を払って2階に上がり、梨花はリビングのドアを開ける。
そのとき、床の下からパタパタとした足音が聞こえてくる。次いで階段を登る、キシッ…キシッ…とした足音が聞こえ、すぐにリビングのドアがノックされた。そしてまったりとした高い声で、
「陽ちゃん、梨花ちゃん、帰ってるのー?」
義母の声だった。
「ごめんなさい、起こしてしまいましたか」
梨花が慌ててドアを開けると、義母はパッと顔を輝かせた。
「ううん!2人のお土産話聞こうと思って起きてたのよー!」
梨花が頭を下げるのと同時に、背後から陽一の声がした。