ジェンダーについて
これは筆者がセクシュアルマイノリティだということもありますが、ジェンダーや多様な性について学校で学べていたらよかったなと思います。
LGBTQ+などの「男女以外にどんな性があるのか」や、性的指向は異性ではなくてもおかしくないこと、カミングアウトを受けた際のアウティングなど、セクシュアルマイノリティについて知られていた環境だったら、筆者の学生時代はもっと違うものになっていたでしょう。
自分がしてきた苦労は、若い世代にはなるべくしてもらいたくはないものです。
性自認が女性もしくは男性の異性愛者であっても、女らしさ男らしさに捉われなくてもいいといったことは、どんな人も学べた方がいいと思います。
できれば、男らしいとされていることも女らしいとされていることも、そうでないこともどれもが素晴らしく優劣はないことなのだと。
このあたりの内容は、いまは教えている学校もあると思いますが、たとえばそれを人生の選択肢にも当てはめて教えてあげてほしいのです。
異性愛者のカップルが結婚した際、妻が家事全般を担っていてそれが当たり前とされる現実が、令和になったいまでもまだまだ主流のように扱う地域は少なくありません。
それでいい家庭もあれば、それだと困る家庭もある。同じ家庭はひとつとしてない…そんなことはごく当たり前のことなのに、主流を性別役割分業として子ども世代に押し付ける親世代もいます。
家庭で教えられないのならば、せめて学校で教えてほしいです。
クォーター制が少しずつ企業のなかでも広まりつつあり、これからはいままで以上に仕事における男女の垣根や段差は取り払われていくはずで、実際そうなってほしいとも思います。
そんな社会でこれから働いていくのだから、これまでの性別役割で物事を考えるのではなく個々の得意不得意等の特性で考えるべきということは、女性だけではなくこれからの男性の生きやすさにも繋がっていくはず。
これは筆者自身も社会人になって何年もの間、自分は女性の身体だからといって女性らしさを向けられたくないと思っていた半面、男性には「男性なんだから仕事を頑張るべき」と男らしさを押し付ける考え方をしていました。
自分の持つ性だけではなく、そのほかの性にも思いを巡らせるようになってはじめて、よくない考えだったと反省したものです。
誰もが性別で苦しまないような社会になるために、そんな授業が自分が学生のころにもあってほしかった。
もしあったら、きっと人生の選択肢を考える時に自分がどう生きていきたいかを考える役に立つはずです。
さいごに
実は今回、「こんなことを性教育で教えてくれたらよかったのに」と書き連ねてきたことの多くは、包括的性教育の範疇にあることばかり。
耳馴染みがあまりないかもしれませんが、包括的性教育とは身体、生殖の仕組み以外にも性や自身の価値観について幅広いテーマを含む教育のこと。
日本ではまだまだ主流ではありませんが、世界の多くの国で行われている教育であり、そのために国連教育科学文化機関(UNESCO)は「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」という教育目標を示しています。
「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」は大きく分けて8つのキーコンセプトで構成されていて、
- 人間関係
- 価値観、人権、文化、セクシュアリティ
- ジェンダーの理解
- 暴力と安全確保
- 健康とウェルビーイング(幸福)のためのスキル
- 人間のからだと発達
- セクシュアリティと性的行動
- 性と生殖に関する健康
と私たち30代が学生のころに学んだ内容よりも深く、大人になったいま必要なのではと感じるトピックスが並んでいます。
必ずしも「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」を取り入れることだけが正解ではないかもしれません。
しかし、SNSなどで誤った情報やよくも悪くも広い世界に簡単に手を伸ばすことができるいま、これまでの性教育で子どもたちや若い世代が自分を守ったり大切に思うことはどうしても難しい気がしてしまいます。
そして、それらを学校で学ぶことができなかった大人のひとりとして、改めて性教育について知っていく義務があるのでは、とも。
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