年始から「前受け」スタート
そうこうしているうちに冬期講習。最後の季節講習です。
もうこの時期には模試も終わり、あとは過去問演習をひたすら回すという段階でした。
年末年始のお休みは3が日だけ。大みそかまできっちり授業があって、まさに勉強漬けでしたが、おちゃらけ男子の仲間たちのおかげで息子は楽しそうでした。
年明けにはいよいよ「前受け」と呼ばれる受験がスタートします。
首都圏の入試は競争を抑えるため、「解禁日」というのが存在します。自由にしてしまうと、早く試験をしてしまったほうが生徒が集まるというのでどんどん試験日が前倒しになってしまうという問題が出てしまうようです。
それだと、こちらも受験勉強のスケジュールが立たないですもんね。
ということで首都圏、埼玉は1月10日、千葉は1月20日、そして東京、神奈川は2月1日、と決められていました。地方の私立は特に制限なし。
なので、神奈川県民であるわたしたちは、本番試験は2月1日からスタートということになっています。
ここでできた文化が「前受け」。受験の練習として、地方の学校や埼玉や千葉の受験を本番に先駆けて腕試しに受ける、という文化です。
もちろん受験料はかかるのですが、事前に受けておくことで心構えができると聞くと、やはりやらせておこうという選択をするご家庭が多いようです。
わたしは右も左もわからないので、先生の言う通りに前受けをすることにしました。
前受けは、その子の持っている偏差値や受けようとする受験校によってやり方や目的が全く異なります。
息子のような高みを目指さない中堅を受ける場合には「受験の練習」と「自信をつける」という目的で、地方の私立学校が関東で行う試験を受けます。
レベル的にはかなり受かりやすい設定で、受かったところで九州などの学校なので通えない。
つまり試験を行う学校も実際に生徒が来るわけではないので「受験料の出稼ぎ」要素もあり、こちらはこちらで「いい練習台」ということで、需要と供給がマッチしてしまっているわけですね。
そんなわけで、我が家は地方の大学付属校を1月のはじめに受けることにしました。
こちらは模試代わりに使えるようにと、なんと合否のほかに成績まで出してくれるとのこと。わかってらっしゃいますね。
そんな、「なんだかなぁ」なビジネスでも、子どもにとっては「合格した」という事実が自信につながり、この先もよい結果につながるためのメンタル維持として必要と言われたら…まぁ受けますよね。
もうひとつ、千葉の解禁日に大学付属校を受けるよう勧められました。
こちらは受けた人はほとんど行かない地方と違い、千葉の人たちは本当に進学しようとしている人たちが受けに来るので、もう少し本番に近い緊張感が味わえるとのことで受けたほうがいいとのこと。
千葉まではるか遠く、連れて行くのが大変だと思いきや、塾の先生が引率して連れて行ってくれるとのこと。だったら旅気分で行かせましょうということで受験することにしました。
前受けに当たり、出願のための写真撮影も必要です。
いまはほとんどがネット出願なので、写真は何でもよいと言えばよいのですが、受験となればやっぱりきちんとした格好で写真を撮ったほうがいいのでは、と写真館を予約。
シャツと紺のカーディガンを着せ、できるだけ賢そうに見えるように撮影してもらいました。
面接も書類選考もないけど、もうここら辺は親の願掛けみたいなものです。
うちはこのようにゆるい感覚で前受け受験を決めましたが、トップ校を狙っている人たちはもっと戦略的に前受けを利用するようです。
たとえば東大排出ナンバーワン、東京の開成中学を狙うなら、埼玉では栄東という学校で腕試しし、千葉では市川中という市川トップの学校で腕試しという感じ。
女子は女子で、都内御三家を狙うなら、埼玉で豊島岡、千葉で渋谷教育学園幕張(渋幕)を取りに行くとか。
トップを狙う人たちは本当にシビアな戦いなので、その子のメンタルに合わせて受験校を決めたりするのだとか。
たとえば、なにくそ根性がある子なら、わざと落ちそうなところを受験させ、2月までに奮起させる計画。
メンタルが弱い子なら、受かりそうな場所で自信をつけさせる、など塾講師たちが前受けでメンタルコントロールをするという巧みな技を駆使します。ああ、怖い世界ですね。
このあたり、「2月の勝者」でリアルに描かれているので、興味のある方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。
そんなこんなで前受け校も決まり…なんだかそわそわと落ち着かない年末を迎えました。
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