「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」
ゼクシィのCMで話題となったこの言葉は、宣伝・広告・環境に関する出版社である宣伝会議が運営するメディア「ブレーン」が発表した、2017年度「ブレーン広告グランプリ」でも1位となった。
女性の社会進出が当たり前になり、おひとり様が楽しめる文化や娯楽があふれるようになった昨今では、結婚に対する価値観が大きく変化している。事実婚のみならず、週末婚・別居婚・契約婚・共生婚など、一昔前の「結婚」という枠のなかには収まっていないと思われるようなかたちを取る夫婦も多く存在するようだ。
そんな結婚観や結婚に関する情報をいち早くキャッチするのが、Z世代。Z世代とは、日本においては1990年後半~2012年ごろに生まれ、現在9~26歳ほどの若者を指す。SNSに触れることが呼吸をするのと同じくらい当たり前となっているこの世代は、どのような結婚観を持っているのだろうか。
きょうは1996年生まれの「Z世代」であり、現行の結婚制度に対し疑問を抱いている筆者が、同年代の動向・考え方を踏まえて、これからの結婚観について分析してみよう。
「いまどきの若者」と一括りにしていませんか?
よく「いまどきの若者」と言って10代〜20代の若い世代をまとめがちだが、このなかでも大きく価値観がわかれる世代が存在する。その違いが現れる鍵となるのが、「デジタル媒体」である。
1981年〜1995年生まれの世代は「ミレニアル世代」と呼ばれ、検索エンジンやモバイル携帯が生まれてから進化する過程を目の当たりにしてきた、いわば“デジタルパイオニア”世代。
この世代の目に触れてきたものは、働く女性の数が目覚ましく増えていく姿や自立して生きる様がかっこよくかつそれが可能だとする世のなかである。そんなミレニアル世代は現在いわゆる結婚適齢期とよばれる世代であり、このような価値基準から結婚の形も大きく変化のときを迎えたのだった。
「結婚しなくても幸せになれるこの時代」にわざわざ誰かと一緒に生きるという選択を取る。けれど、「その一緒に生きる」という形はどんな姿をしていてもいいのではないか、というのがZ世代よりひとつ上の世代であるミレニアル世代が生み出した結婚観だ。
対してZ世代は“デジタルネイティブ”ともよばれる。育っていくなかでSNSや高速インターネット、スマートフォンが当たり前に存在し、情報を素早く簡単に手に入れられることを前提とした価値観をさまざまなものに対して持っているのだ。
多様性と小さな幸せが鍵。Z世代の特徴
そんなZ世代の特徴を見てみよう。まず、SNSや高速インターネットが当たり前に存在するなかで育ってきたため、プライバシーを保護する意識が高い。インターネットに公開されてしまったものは消えることがないというデジタルタトゥーの概念を現実的に捉えている。
また、SNSなどで多様な価値観に触れ、Z世代の若者個人も多様な考えかたを持つものが多い。「インターネットで情報収集をし、それを取捨選択する」という習慣があるため、 テレビなどの大きな媒体だけで物事に対する判断を下すことが少ないのだ。
そして何より、Z世代は生まれてから好景気を味わったことがない。そのため、倹約家であるという人や大きな買い物はしないという人が多く、大企業に勤める=安泰であるという考えかたを持つものも少ない。
そもそも“安泰”の基準がむかしに比べて下がっているため、好景気に生きた人々からみて「小さな幸せ」を好む傾向にもあるのだ。
SNSで多様性に触れ、「大きな組織に属すことが幸福だとは限らない」という価値観を持った結果、自分自身で現状を変え、市場を大きくしなくても必要とする人に求められればよいのだという思考が生まれたため、起業する人も多くいるのだろう。