新しいアイデンティティがもたらした安堵感
ライターT:悩んだりはしなかった?
マイコ:確かにさ、「実はあなたはセクシャルマイノリティーですよ」といわれるとドキッとするけど、そうやってラベリングされたことによって、自分は人と違うのかな?ちょっとおかしいのかな?って心の底でモヤモヤしていたものが、スーッと消えていったんだよね。
幸いなことに、私にはゲイやパンセクシャルの友達もいるから、セクシャルマイノリティ自体になんの抵抗もなかったし、むしろ自分と同じような価値観を持つ人たちがいるんだってことへの安心感や、「自分はこういう人です」といっていいんだという安堵感もあった。
何より、これまでは「結婚しないの?」って聞かれたときに、まったく思ってもいないのに「まあご縁と機会があれば」とか無難に答えてたけど、ポリアモリーという言葉で新たに自分をカテゴライズされたことで「自分はこういう人間なので、結婚は考えていません」って説明できる。自分を偽らずにいられるようになるなって思ったんだ。
ライターT:なるほど…「誰かをこうだと決めつけてラベリングするなんて、その人の個性を認めてないんじゃないか」って意見も見聞きするけど、マイコはラベリングされたことによってで、自分の感覚を認められた感じがしたのかもしれないね。ちなみに「自分はポリアモリーです」って、自分から周囲にカム(カミングアウト)しているの?
マイコ:本当はそうしたいけど、貞操観念に厳しい日本では難しいのが現状。基本的には相手が私に興味を持ってくれて、恋愛や結婚についてどう考えているのか聞いてきてくれたら話すようにしてるよ。大切な人や近しい人は、もうだいたい知ってるけどね。
ライターT:家族にも伝えたの?
マイコ:うん。姉が再婚することになったときに、自分のこの先の話をするにもちょうどいいタイミングかなって思って、「私は、パートナーがいることはいいと思うけど、いわゆる法律婚はするつもりない。なぜなら私はどうやらポリアモリーという種類に属する人のようで、こういう考えを持っているから」って話したよ。特にママが私が結婚することを期待してくれていたら悪いなと思って。
ライターT:ママはなんて?
マイコ:「へー。いろんな考え方があるのねえ、いまは。別にいいんじゃない?ママはマイコが元気に楽しく生きていってくれたらそれで充分幸せよ。確かに、結婚っていうのは形だし、国が作ったルールみたいなもんだから、それに乗りたいなら乗ればいいし、それよりもあんたを支えてくれるパートナーがいてくれることの方がママには重要かな。どんな形でもいいけど、相手はいてほしいね〜」だって(笑)。
ライターT:愛情にあふれた言葉だね。きょうだいも?
マイコ:姉も「いいんじゃん?結婚は面倒なことも多いし、したいと思わないのにわざわざする必要はないよ。したい人がすればいいことなんだから」ってさ。
ライターT:よかったねえ。なんか心温まるね。
マイコ:でしょ?大事な友人たちも、誰も驚いたりせず、「マイコがそれで気が楽になって、自分らしく生きられるって思えたなら本当によかったね」っていってくれて嬉しかったな。「ポリアモリーのことを知らない人は多いだろうし、知って何かきっかけもらえる人もいるかもしれないから、もっと伝えていったら?」といってくれた友達もいて、なんかグッときたよ。