身バレ
数日後、美奈子が凜花の新しく上がった動画を確認すると、コメント欄にまたしても「凜花ちゃんファンクラブ会長」がいた。
どうやら新しくアカウントを作ってコメントしているらしい。会長のコメントには、凜花の動画を見ている人からの「粘着するのやめてあげて」「黙って応援してればいいのに」「凜花ちゃんを怖がらせないでください」というコメントもついていた。
「凜花、この人またアカウント作ってきたの?」
「うん…最近DMも来るの。なんでブロックしたんだみたいな内容なんだけど、3回くらい画面スクロールしないと読めないような超長文なんだよね。結構脅しっぽい内容で…怖くて」
凜花は相変わらずダンス動画をあげフォロワー数を増やしていたが、ファンクラブ会長から寄せられるコメントとDMにはうんざりしているようだった。
「気にしないでとか、応援してるよって言ってくれる人のほうが圧倒的に多いから気にしないのが一番なんだろうけど…気になっちゃうよね。しかもDM、1日に10通くらい来るし」
「…もう、アカウント消したら?」
美奈子は娘が心配だった。安全を脅かされるような出来事が起きてしまうのではと不安にもなった。
「…それ、光一にも言われた」
光一、凜花の彼氏である。少しむすっとした顔で呟く凜花は、アカウントを消すのがまったく本意ではなさそうだ。
「嫌なの?」
「嫌だよ、ここまでフォロワー増えて有名になったんだよ?」
「でも、このままだと凜花が苦しむことになるよ」
「だけど!」
ムッと大声を上げる凜花を制したのは、弟の聡志だった。
「光一くんの言うことは聞いたほうがいいと思う。きょう学校でネットの授業やったけど、マジで最近ネットを通じた犯罪とか多いらしいから、俺もアカウント消すべきだよ」
「はぁ?アンタまでなんなの、私の努力とか知らないくせに。こんなことにいちいち動じてたら有名人になんてなれないじゃん」
「でも俺、姉ちゃんに何かあったらいやだよ。光一くんに賛成だね」
弟の心配そうな言葉を聞き、ついに凜花は黙った。そして小さな声で「わかったよ」と言い、次の日アカウントを消した。
アカウントを消してから数日、凜花はあまり元気がなかった。自分を認めてくれる居場所がなくなってしまった、そんな風に感じたのだ。
そんな凜花を心配していた美奈子のもとに、ある日「ファン」と名乗る人物からのDMが届く。
美奈子のSNSアカウントに送られてきたそのDMには、「見つけた」と一言記されており、美奈子たちが住むマンションの写真が添付されていた。
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