動画がバズって一躍有名になった凜花のもとに、ファンを名乗る人物から執拗なコメントが届く。
個人情報を特定され、自宅にまで押しかけられた凜花。凜花の母・美奈子は、凜花をママ友・香織の家に泊めることに決める。
しかし、安全だと思っていた香織の家に悪夢が潜んでいたのだった。
- ※この記事にはセンシティブな記述・表現が含まれています。
第1話:はじまりは、1本の「ダンス動画」だった…娘を襲ったSNSの恐怖
第2話:SNSで何枚も…少女が思わずスマホを投げた「写真」に写っていたモノ
第3話
- 登場人物
- 美奈子:この物語の主人公
- 凜花:中学2年生。美奈子の娘
- 聡志:小学6年生。美奈子の息子
- 良助:美奈子の夫
- 光一:凜花の彼氏
- 香織:光一の母
- ファンクラブ会長:凜花に執拗なコメントをする男
犯人の正体
「ママ!ママ助けて!」
電話越しから聞こえてきたのは、凜花の叫び声。
「姉ちゃんに触るな!クソジジイ!」
そして聡志の絶叫と、「てめぇ、ふざけんなよ!」光一の怒鳴り声。
美奈子は電話を繋げたまま、良助と共にパジャマ姿で香織の家へと向かった。ハンドルを握る良助の手は震えていた。
深夜1時、突如美奈子のスマホが震えた。
美奈子は寝ぼけ眼でスマホを手にとり、画面に映った「凜花」の文字を見て飛び起きる。
そして電話から聞こえてきた叫び声を聞いて、何かが起きたのだと瞬時に察したのだ。
普段は眠りが深く並大抵のことでは起きない良助も、きょうばかりは飛び起きてきた。
バタバタと香織の家に駆けつけると、そこにはリビングで泣きじゃくる凜花と、凜花を抱きしめる香織。そして客室で震える聡志と、自分の父親を取り押さえ呼吸を荒げる光一がいた。
美奈子が到着してすぐに警察もやってきて、客室で光一に事情を聴いている。
「何があったのか、教えてもらってもいいかな」
婦警がリビングで泣く凜花の目の前に座り、凜花はゆっくりと口を開く。美奈子と香織は凜花の肩をそっと支え、2人も初めて聞く、深夜の一部始終に耳を傾けた。
『寝れない、光一は起きてる?』凜花は、そう光一に連絡をとろうとしていた。
そのときだった、スッと静かにふすまが空いたのは。
客間の畳がゆっくり沈むたびにギィ、と鈍い音がする。凜花は無意識のうちにスマホの画面を消し、寝ているふりをしてしまった。
怖い、何?なんなの?お化け?
凜花はパニックになりながら、じっと息を殺していた。
客間に入ってきた足音の主はゆっくりと凜花の布団に近づき、あろうことが凜花の布団にゆっくりと入ってこようとする。
「誰」
先に声を上げたのは聡志だった。
爆睡しているはずの聡志はふすまの開いた音で目を覚まし、足音の主の様子をじっとうかがっていたのだ。
聡志に声をかけられた声の主は、凜花の布団に片足を突っ込んだ状態で固まる。
「お前誰だよ!姉ちゃんに近づくな!」
震えながら大声を出した聡志は、布団から這い出て足音の主にとびついた。
凜花はようやく息ができるようになり、それからすぐに母親、美奈子に電話をかけた。
コール音が鳴る最中、隣の部屋からドタドタと足音がして、勢いよくふすまが開き、光一が入ってくる。必死に足音の主を取り押さえようとする聡志に助太刀し、声の主はこれ以上逃げることができず畳のうえに伏せる。
ようやく母親が電話に出たとき、凜花は声の主が、光一の父親だということに気づいた。
連行されていく父親を見て、妻と息子は何を思うのだろうか。美奈子は香織と光一の背中を見てそんなことを思った。
「聡志、ありがとうね」
凜花が聡志にお礼を言っている。聡志と凜花の肩を、良助が黙って抱いている。
「姉ちゃん、俺めっちゃ怖かったわ」
「勇敢だったよ…ありがとう」
凜花も聡志も涙を流していた。