動画がバズって一躍有名になった凜花のもとに、ファンクラブ会長を名乗る人物から執拗なコメントが届く。
さらに、凜花の母親・美奈子のアカウントには、自宅マンションを特定する写真まで送られてきたのだった。執拗なファンの猛攻は止まらない…。
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第1話:はじまりは、1本の「ダンス動画」だった…娘を襲ったSNSの恐怖
第2話
- 登場人物
- 美奈子:この物語の主人公
- 凜花:中学2年生。美奈子の娘
- 聡志:小学6年生。美奈子の息子
- 良助:美奈子の夫
- 光一:凜花の彼氏
- 香織:光一の母
- ファンクラブ会長:凜花に執拗なコメントをする男
父親の思い
「それで、俺にどうしろっていうわけ?」
帰宅早々、妻の美奈子に「SNSに変なDMが届いた」と泣きつかれた良助は、心底うんざりした気持ちになった。
勝手に凜花とギャアギャアやって楽しんでたんだから、問題の後始末も自分でやれよ。必要なときだけ頼ってきてうるさいな。俺は疲れてんだよ。
そう言いたい気持ちをグッとおさえ、良助は美奈子に向き合う。
「俺、SNSのこととかよくわかんないし」
「わかんないかもしれないけど、良助はどうしたらいいかなって思って…。だって家がバレてるんだよ?凜花のためにも、警察に相談したほうがいいよね。これってストーカーみたいなものじゃない」
「はぁ…じゃあ俺に相談する前に警察にとっとと言えばいいだろ」
「何その言い方、凜花が心配じゃないの?」
「いや、そんなこと言ってないよね」
うんざりする。うんざりして、それと同時に、どうせアドバイスしたところで聞かないくせに、と思う。
良助は、自分が優しく寄り添ったところで否定されるんだろうなと感じてため息をついた。
凜花が心配じゃない?そんなわけないだろう、自分の大事な娘だ。心配に決まっている。SNSでバズったとか訳のわからないことを言われたときも、有名になってよくない虫がついたらどうしようかと不安になった。
凜花のいま付き合っている彼氏は守ってくれるのだろうか。家族ぐるみで仲がいいから信頼はしているが、所詮は他人だ。凜花に何か起きたとき、見捨てたっておかしくない。不安だ。
妻は何も不安に感じていないようだ、俺はこんなに気にしてるのに、フォロワーが増えたとやいやい騒いでいる。どうしてそんな呑気にしていられるんだ。
インターネットの恐ろしさを知らないのか。あげた写真は二度と消せない。些細な痕跡からも個人情報を突き止められる。言ってないことまで言ったと言われ、噂は瞬く間に真実として拡散される。
そんな話をしたって聞いてもらえないから放っておこう、痛い目をみればいい。そんな風に思っていた自分を少しだけ恨み、良助は一言だけ口にした。
「とりあえずアカウント消せば?向いてないんだよ、SNS管理すんの。お前も、凜花も」