好きになった人が、たまたま「既婚者」だっただけ。
そんな理由で不倫関係を始めてしまう独身女性は実際に多いですが、相手が結婚している限りまともな愛情を育てることは難しく、結局は不自由な思いに耐えきれなくなります。
不倫を受け入れる既婚者側にも問題があり、配偶者がいながら別の異性との深い関係をよしとする姿には、信頼を向けられません。
ある独身女性は、既婚の上司に恋心を寄せていたけれど、最後はその思いそのものと決別することになりました。
女性に何があったのか、不倫を始めなかったケースをご紹介します。
相手が既婚者でも「片想いなら」と思っていた
規模の大きな会社に営業アシスタントとして勤務する真弓さん(仮名/27歳)は、部署の上司に一年以上片想いをしていました。
異動してきた際に40歳とわかったその男性上司は、「既婚でなかったらアタックする」とささやく女性社員がいるような魅力的な人で、顔だけでなく部下に優しく指導して結果を出させることでも有名でした。
「私はアシスタント業務がメインなのでその上司と話す機会は少ないのですが、見ていると本当に優しいというか落ち着いた人で。ミスをした人を叱りつけることなく原因を一緒に探すところとか、部下の手柄を横取りしないのも営業の人たちが慕う理由でしたね」
既婚であるのはみんなからの情報で知っており、指輪をしていない上司自身はあまり家庭の話はしないけれど、「既婚者だから恋愛対象になるとは思っていませんでした」と真弓さんは振り返ります。
それがどうして好きになったのか、きっかけは取引先の会社と合同でイベントを行うと決まったときに「ひとりでアシスタントは大変だと思う、何かあったら俺にすぐ連絡して」と丁寧に声をかけてくれたこと。
判断に迷ったときに思い切って相談したら、「状況もそうなのですが私の気持ちまで気にして、守ろうとしてくれるのがすごく伝わりました」と男性上司の姿に大きな安心と信頼を真弓さんは感じます。
やり取りが増えてからは部署でも気さくに話せるようになり、いつしか「こんな人が彼氏だったらな」と憧れのような気持ちが生まれたそうです。
それが恋心まで発展したのは、些細なミスで落ち込むのを「あなたの普段のがんばりを俺は知っているから」と励ましてくれたときに「本当にうれしかった」と感じたときで、真弓さんは片想いでもいいからとこの男性上司を好きになりました。
漏れていく恋心
相手が既婚者なら、好きになっても成就はまず叶わないと思うのが普通ですよね。
「略奪愛なんてとんでもない、付き合うとかそういうことは考えられませんでした。私が勝手に好きになっただけで、この人から好かれる可能性すら想像しませんでしたね」
真弓さんは首を振りながらそう言いますが、「こんな人が彼氏なら」という淡い憧れが本当の恋心になったとき、「相手は結婚している人」という現実に打ちのめされたそうです。
「好きだからこそ諦める」という矛盾を自覚しながら会社で過ごす真弓さんでしたが、上司の一挙一動が気になり、目が合うだけでうれしくなったり別の女性社員と話すのを見て胸がざわざわしたり、落ち着かなかったと言います。
告白すら難しいような既婚者への片想いは、気持ちを抑圧する場面が多いぶん、わずかな接触があると全身で喜びを表すような危うさがあったことを、真弓さんは振り返ります。
「給湯室でお茶を淹れていたら偶然その人がやって来たときがあって、いいよと言われたのにコーヒーを用意してしまって、私のほうが一方的に話してばかりみたいなときもありました。
仕事のことで話しかけるタイミングも絶対にほかの人がいない隙を狙っていたし、ついでみたいにガムを差し入れしていたのも、いま思えば好きなことがバレバレだったと思います」
ちょっとした雑用を上司の前であえて引き受けてみたり、真弓さんの行動には明らかにその男性への気持ちが滲んでいました。
そんな姿がどう映っていたのか、「周りに人がいないときは気さくな口調で話してくれるようになった」と、上司の側にも変化が生まれます。
漏れていく恋心を止められないまま、真弓さんは上司と過ごす時間に幸せを感じていました。