やってきた、「鼻からスイカ」のXデー

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そして、ついにその日がやってきました。「子どもが生まれたら気軽に外食もできなくなるね」と外食した帰り、珍しく夫が気持ち悪いと言って帰宅。その後、夫は少し吐いて爆睡。
わたしは少しゆっくりして、トイレに行ってから寝ようと思った瞬間、なにか大量のお湯的なものがジャバっと。
えっ?と思ってトイレに行くと、明らかにおしっこではない何かお湯がジャバっと出る。わたしは大パニック。これは破水ってやつではないか、と。
もう夜中の12時を過ぎていて、夫は顔色悪く爆睡。けれど破水したら即入院と言われていたので夫を起こすしかない。
仕方なく夫を起こして「破水した…」と伝え、病院にも電話。「すぐ来てください」と言われたので、夫は飛び起きてあわてて車にダッシュ。
力を入れると水が出てしまうので、大きな生理用ナプキンを装着し、準備してあった入院セットとともに夫の運転で病院へ。
まさか陣痛より先に破水が起きるとも思っておらず、びっくりしながら手続きをして入院すると、通されたのは陣痛室。
陣痛室と言っても部屋ではなく、簡易ベッドが並び、カーテンで仕切られているだけの場所。
出産は、陣痛が起こればすぐ産めるわけではなく、陣痛を耐えながら徐々に子宮の出口がひらくのを待って、全開になったらいざ分娩台へGO!というなかなか体育会系な仕組みです。
通常、破水が先でもすぐに陣痛が来る予定。けれど予定は未定。ということで、陣痛室で陣痛が来るのをひたすら待つことに。
破水するということは、赤ちゃんを守っている袋が破れたということで、あまり長時間破水したままだと赤ちゃんの命が危ない。
赤ちゃんの心拍を測るモニターをつけ、わたしの心拍もはかりつつ、簡易ベッドでやることもないまま横になります。
けれど煌々と電気がついて、1時間ごとに赤ちゃんの心拍をはかり「どうですか、陣痛来ましたか?」と看護師さんが来るのでおちおち寝られもしません。
さらに夜中に陣痛が来た妊婦さんが次々と運ばれてき、カーテン越しに陣痛の痛みに雄たけびをあげています。
ただでさえ陣痛が怖いのに、あんなに痛いなんて冗談じゃないと思い、出産直前なのにまた恐怖。
そしてさんざん雄たけびを上げたと思えば分娩室に行き、オギャーと赤ちゃんが生まれる声がします。
わたしはといえば、結局朝まで陣痛が来ず。わたしゃどうなるんだい、と思っていると、「あしたまで待っても陣痛が来なかったら、陣痛促進剤を入れて人工的に陣痛を起こして出産にしましょう」と。
そうでないと、破水した部分から雑菌が入って赤ちゃんの命に係わるかもしれないとのこと。
なので破水後24時間待っても陣痛が来なければ、促進剤で無理やり出産に持ち込むそうなのです。
人工的に陣痛って、怖くてすごく嫌。自然に来るのも嫌だけど…とまた恐怖。それまでに自然に陣痛がくればいいですが、うんともすんとも。
夫はわたしの出産で忙しくなると思ったのか、急遽1週間夏休みを取ってくれ、様子を見に来てくれました。
ちょうど夫の地元からメロンが送られてきたのでメロンを切って持ってきてくれ。バタバタと騒がしい陣痛室でのんびりメロンを食べても、陣痛は来ず。促進剤いやだなぁと思いながら、また眠れない夜を明かします。
結局陣痛のじの字もないまま、2回目の夜が明けました。いよいよ朝から陣痛促進剤の点滴です。
痛くなるための点滴なんて嫌に決まってるので、ものすごくテンション低くスタート。
するとさすが無理やり陣痛を起こさせる薬だけあって、効果てきめん。
出産経験者の話を聞くと、徐々に痛みの波が大きくなって…という話でしたが、促進剤を打って1時間ほどで、もう「いたーーーーーいっ!」と叫ぶほどの痛さに到達。わたしはたぶん痛みに敏感なのだと思います。
しかも促進剤を使ったせいなのか、通常、自然な陣痛では「陣痛と陣痛の間はうそみたいに無痛」と聞きますが、わたしの場合は陣痛の波があれど、その間もなんか痛い。
そしてまたものすごい波が来るというので、もはや拷問。
そして陣痛というのは、それを経て赤ちゃんが出るに十分な子宮の出口がひらくプロセスなので、陣痛の波に耐えながら子宮口が10cmまで開くのを待つのですが、陣痛促進剤を打って効果てきめんに痛みは来ましたが、子宮の開きを見たらなんと2cm!
2cmって、まだ陣痛来ない臨月の人レベルです。開いてないのと一緒。この子宮口が開ききるまで陣痛の波に耐えなければなりません。
でも陣痛に耐えて3時間ほどたっても子宮口は変わらず。もう痛いと叫ぶのも疲れてきて先生に「これ、ずっと子宮口開かなかったらいつまでやるんですか?」と聞きました。
すると先生はこともなげに「うーん、夜の12時までやってもダメだったら、1回促進剤抜いて、あしたの朝また一からやり直しかなぁ」と言います。
…冗談じゃない。
病室とも呼べない陣痛室で眠れない夜をまる2日過ごし、さらに痛みMAXの促進剤を夜まで耐え続けてもダメならあしたもう一度?
疲れがすでに限界を迎えていて拷問を受けているような気分になりました。
時計を見ると、まだ午後2時くらい。あと10時間耐えても産めるかわかんないってどういうこと?
わたしの痛みにも特に寄り添ってくれず、ぶっきらぼうで感じの悪い先生に、急に怒りがこみ上げてきました。
それで先生に「すみません、もう体力が限界なんですけどほかに方法ないんですか!?」と陣痛真っ最中なのに先生にブチギレながら叫びました。
すると先生は「うーん別にしたから生みたいわけじゃないなら帝王切開でもいいけどぉー」とか言うのです。
なにその「いいけどぉー」って言い方は!とさらに怒りがこみあげてきて、「別にしたから生みたいなんてこだわりないんで、早くこれ終わらせてください!」とオーダー。
すると先生は面倒くさそうに「うーん、まぁ破水してから時間たってるし、ちょっと胎児の心拍も落ち気味だし、じゃあ、手術室空いてたら帝王切開するー?」とゆるく聞いてきました。
あのね、「暇だから本でも読もうかな」のテンションで言うのやめてもらいます?こっちは命懸けなんだわ!
ということで、とりあえず手術室の空きを聞いてもらうと、18時から手術室が空いているとのこと。
「どーするぅ?」と聞かれたので、「それでお願いします!」と即座に帝王切開をオーダー。
わたしの雄たけびで、緊急帝王切開に切り替えになりました。