私たち、友達だよね?
渋る達樹に結婚式を了承してもらうためには、「たくさんの友人に結婚式の場を望まれてる」と話をでっちあげるのがいいだろうと思った。私の幸せな姿を見たいと言っている人がこんなにいるのよと。他者の力も借りてプレゼンすれば、達樹もうなずくだろう。
達樹の両親だって、結婚式で私の姿を見れば態度を改めるはずだ。結婚の実感がわくのだから。
そんな想像もむなしく、私が友人に送った「結婚式をあげたら来てくれる?」というメッセージは、ことごとく無視された。誰からも返ってこなかったのだ。
がっくりうなだれたまま達樹と夕飯を食べていると、スマホが震える。
「小春に悪いからいけないや、ごめんね」
友人からのメッセージは、最悪な内容だった。小春に悪い?負けたやつに対して、何が悪い?そんなこと思う必要なんてどこにもないはずなのに。
「どうしたの?眉間にしわ寄ってるよ」
達樹が心配そうにこちらをのぞき込んでいる。母親の気持ちを察したのか、お腹のなかの赤ちゃんも、ぽこぽこと動いた。
ああ、目の前にこんな幸せがあるというのに、ノリの悪い友人たちなんかに振り回されてどうするんだ。もったいない、時間の無駄じゃないか。
「結婚式のこと?」
「うん、ひどいんだよみんな。小春に悪いから来れないって」
「ああ…まあ普通はそうだよね」
「普通って、何」
「えっ、いやなんでもないよ。今回は写真にしようよ。式はさ、出産後でも計画できるだろ?」
たしかに。赤ちゃんと一緒の結婚式も思い出になりそうだ。赤ちゃんがいればみんな優しくなるだろう。私に冷たくなんて当たれないはずだ。
そして私は妊娠7カ月で、達樹とのブライダルフォトを撮影した。