「友人は、常に私に釣り合う人じゃないと」
リサは顔やスペックで友人と恋人を選んでいた。きのうまで仲がよかった相手も、きょうはもう、ブランド物のバッグを持っていなかったからさようなら。
私に似合う人だけいればいい。私の価値を下げる友人なんていらない。
第1話:私の彼と、私の友達
- 登場人物
- リサ:この物語の主人公
- 賢一:リサの彼氏
- 千晶:リサが唯一心を許している親友
私の友達

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「ねぇ、写真撮ろー」
リサがスマホを掲げると、みなが一斉に画面のなかに入ってくる。シャッターを押せば、インスタ映えする顔たちがデータにしっかり残される。
ハイスペックな彼女たちの顔を眺めて、リサはうっとりした。そんな子たちに囲まれて、センターで微笑むリサは最高に幸せそうな顔をしていた。
「だってお金かけてるもん」
近くで私たちの会話を聞いていた女子の1人が、ニコニコと声をかけて来た。彼女はフォロワー数7万人。最近はカラコンやナイトブラを企業とコラボしていて、知名度がグングン上がっている。
「ってかそのバッグ、よく買えたね。限定物でしょ?」
「これねぇ、お客さんが買ってくれたの。バレンタインのお返しだって」
そう話すのは、ラウンジ嬢の千晶。SNSは鍵アカウントだが、実家が裕福でとにかく美人。一緒に居ると、男性からのナンパがたえない。
「そうだ、由香ちゃんもフォロワーまた増えたんでしょ?案件とか、絶好調じゃん」
「そうだけど、まだまだ、全然だよ〜。配信ライブに力入れてるから、そっちのほうが最近はメインかも」
彼女は人気インフルエンサー。配信ライブのランキングでは何カ月も1位を取り続け、最近はインターネット放送の番組にも出るようになった。
モデル、ラウンジ嬢、インフルエンサー。ハイスペックでお金持ちな彼女たちに囲まれている時間は、リサにとって非常に幸福な時間だった。
「リサも髪、また神田さんに切ってもらったの?めっちゃいいねついてたよね」
リサは、彼女たちが送ってくれたInstagramのコメントを思い出す。「リサちゃんかわいい」「リサ、本当に天使みたい」「リサ、次はいつ会えるの?」彼女たちがリサの名前を呼ぶたび、リサのなかの幸せな気持ちが膨らんでいく。
「そうなの。神田さん、私のおかげでまたお客さん増えたって喜んでるんだ」
彼女たちの前では、多少の自慢をしても嫌味にとられることはない。リサはいま、そんな世界に身を置いている。彼女たちと一緒に居る自分は、ほかの一般人とは比べ物にならないぐらい幸せな世界にいるんだと、リサは優越感に浸っている。
「ねえ、みんなの写真SNSにあげてもいい?」
友人たちが頷く。「私もあげよう」とみんなスマホを触りだす。リサが投稿した写真にあっという間にいいねが集まっていく。快感だった。美人な友人、華々しい交友関係。満足だった。
そのうちみんなよりももっとハイスペックな男性と結婚して、どんどん交友関係を広げて、さらに高みへと進んでいくんだ。リサは将来の自分の姿を思い浮かべ、ニンマリと笑った。
すると、ラウンジ嬢の千晶が声をかけてくる。
「そうだリサ、会員制の婚活パーティって興味ない?先日誘われたのよね」