決断
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私の迷いが吹き飛んだのは次の日だった。
朝、娘の体温が異様に高く、母乳もあまり飲まないことに気づく。慌てて病院に駆け込んだところ、生後1カ月の娘がインフルエンザにかかっていることがわかった。
そのまま即日入院が決まった私は、夫に電話をかけた。
『インフルエンザ?まじかぁー』
「うん。だからしばらく入院することになったの。私の着替えとか、病院にもってきてくれるかな」
『あー…まぁ。きょうから健太郎もしばらく飲めないって言うから、大丈夫だよ』
娘より健太郎との予定が大事なのかとキレそうになる。
「…そう」
『ってかさ、健太郎も今朝実は熱があって!昨日から熱っぽかったらしいんだけど、さっき病院行ったらアイツもインフルだったんだよ。昨日からずーっとほっといてたんだって。まじバカだよな!38度程度だったから大丈夫だと思ったらしいんだけど、うつっちゃったかな』
電話越しに笑う雄二の声を聴いて、血の気が一瞬で引いた。
この男も同僚も、娘の命を軽視しすぎていないか。
「それ本気で言ってる?」
『え?何が?』
「いやいい。じゃあ切るね」
電話を切ってから、私は決意を固めた。もうやめよう。こんな男と暮らすのは。
妻の気持ちもわからない、娘の命さえ守れない。そんな男はいないほうがマシだろう。
熱があるとわかっているのに、新生児のいる家に平気でやってくる同僚もおかしい。
子どもを守れるのは自分しかいない。それならば、徹底的に守るしかないだろう。
無事に娘の熱が下がり、退院できたころ。私は雄二が帰ってくる前に自宅の鍵を丸ごと変えた。
そもそもこの家は雄二の家でもあり、私の家でもある。ペアローンを組んで2人で払っているのだ。
許可なしに居座り続ける他人を許しておくことはできないし、不法侵入と変わらないのではないか。
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