スピード婚と慣れない海外暮らしの葛藤
ライターi:実際に海外の暮らしが始まってどうだった?
チカ:半年すぎるくらいまでは、予想以上に辛かった。いまだから愚痴っちゃうけど、トオルも私も本格的な同棲が初めてだったのね。前の滞在では見えなかった生活スタイルの違いをお互いに少しずつ合わせていくのが正直大変だった。
トオルも頑張ってふたりの生活に慣れようとしてくれていたけど、私がよかれと思ってしたことが裏目に出たりしたこともあって、これでいいのかって不安になることも多かったし、最初はちょっとギクシャクしてる感じもあったよ。
ライターi:暮らしてみて見えることってあるよね。
チカ:それに、彼との生活以外でも葛藤の毎日だった。渡豪したてのころ、語学学校に通っていたんだけど、クラスメートに日本人はひとりもいないし、すでにハイレベルな語学力を持っている人ばかりで。いっつもひとりで取り残されてる感じだった。
日常生活でも英語がまったく通じないし、オーストラリアの独特な発音が聞き取れず、ファーストフードさえまともに買えないレベル…。そんななかトオルは何も手伝ってくれず、自分ひとりで何でもしなきゃいけなくて…。
仕事を見つけても、他のスタッフとのコミュニケーションがうまく取れなくてミスしまくるし、謝りたいのに謝罪の言葉が英語で出てこなくて黙っちゃう。自分の愚かさに嫌気がさすことが続いて、「私、大好きな人見つけて、自分で決意して海外まで来ちゃったけど、ここでやっていけるのかな」って、いわゆるホームシックになっちゃって落ち込んでた時期もあったよ。
ライターi:すっごくわかる。きっと海外に来た多くの人が通る道だよね。
チカ:うん。でもそれを救ってくれたのがオーストラリアだったんだよね。
彼との関係を支えてくれた、オーストラリアの多様性
ライターi:トオルさんじゃなくてオーストラリアなんだ(笑)!
チカ:そうなの。オーストラリアって移民国家だから、国や宗教に限らずいろんなバックグラウンドを持った人がいて、考え方も価値観も人それぞれでしょ。でも、みんなそれを否定せずに尊重し合っている。
英語だって、私が黙ってしまっても、言葉が出てくるまで待ってくれたり、汲みとろうとしてくれる人が多くて。友達も、私がまわりに壁を作っていたから出来なかっただけで、少し勇気を出してアクティブになるだけでどんどん増えていったの。不思議だけど、言葉がお互いうまく通じ合わなくても気があう人っているんだよね。
ライターi:うん、すごくわかる。
チカ:そうした人たちと出会ううちに、「違いがあることは当たり前だし、私は私でいていいんだ」って思えるようになったんだ。そしたらだんだんトオルとの関係もうまくいくようになってきたの。
私がトオルのことを好きなことは変わりなくて、大事なことはトオルと家族として成長しながらいい関係を築いていくこと。その気持ちを原点に、トオルと私の生活スタイルの違いも認めて尊重しようって思ってからは、気持ちが楽になって、トオルなりの優しさにも気づけたの。
ライターi:単に手伝ってくれないわけじゃなかったんだね。
チカ:うん、きっとこういうことを学んでほしくて、あえて私にひとりでいろんなことをさせてたんだなって思う。
だから、何より私を成長させてくれたオーストラリアに感謝です(笑)!