一年前に別れた元カレのお母さん。いまでは、私の大切な友人だ。きょうも私は彼女と一緒に舞台を見に行く。
おいしいスイーツを食べて他愛のない話で盛り上がって、そんな休日を過ごす。この先もずっとなかよくしていたい…息子の元カノにそう思われるのは、複雑ですか?
趣味は観劇、好物はクレープ、年齢差は30歳

image by:7maru / Shutterstock.com
「みかちゃん!遅くなってごめんね!」
待ち合わせ場所に現れた優子さんは、濃紺のシックなワンピースに、おしゃれなショールを羽織っている。年季が入りつつもしっかり手入れされたハイブランドのバッグ、シンプルな黒のパンプス、どれも彼女の魅力をより一層引き立たせるものばかりだ。
「優子さん、こんにちは。そんなに待ってないので大丈夫ですよ!」
駆け寄ってきた優子さんに手を振る。いつ見てもキレイだ。私の母と同い年なはずなんだけど。
優子さんは、元カレ・たかしの母親だ。もう彼と別れてから1年近く経つが、優子さんと私の関係だけはいまもなお続いている。趣味の観劇で意気投合した私たちは、休みの日になるとこうして同じ舞台を見に行くのだ。
「そうだ、私きのういろいろと調べてたんだけどね…」
優子さんがバッグからメモ紙を取り出す。そこにはお店の名前と住所、さらに雑誌の切り抜きが貼ってある。
「ここ先月オープンしたんですって。クレープがおいしいみたいなの。劇場から10分くらいのところだし、帰りに寄らない?」
「いいですね!えーっとお店の名前は…」
優子さんのメモを見ながら、私はスマホで店名を検索する。
「みかちゃん、文字打つの本当早いわよね。私いまだにゆっくりしか打てなくて…。最近老眼も出てきたから、画面を見ていられないのよ。書いたほうが早いのよね」
「優子さん老眼なの?」
「そう。最近本を読むときは老眼鏡がないとダメなのよね」
「そういえば私のお母さんも老眼鏡買ってたなあ」
他愛もない会話で盛り上がりながら、私たちは劇場へと向かう。
いつも舞台を見たあとは、おいしいクレープを食べるのがお決まり。舞台の感想でしばらく盛り上がり、そのあとは優子さんのご主人の愚痴を聞いたり私の仕事の愚痴を聞いてもらったり。
毎回「女子会」みたいに話に花が咲く。ほぼ毎日のようにLINEで会話はしているけれど、会っても話は尽きないものだ。
年齢差は30歳。まるで親子のような年の差の私たち。息子の元カノと元カレの母親がなかよくするなんて何ともおかしな話かもしれないが、私はこの関係が気に入っている。