告げられた真実と別れ

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そのあと一体どうやって布団に入ったのか、ゆかりはうまく思い出せずにいた。
昨晩、夫に「後日連絡します」と言われた佐々岡は、そのまま家に帰った。桜は無言で自室に入り、ゆかりは夫と向かい合って話をした。しかし何を話したのか思い出せない。ただ一言「残念だ」という言葉が、ゆかりの耳に残っている。
あれは夢のなかの話だったんじゃないだろうか。不安が大きくなりすぎて、現実みたいになってしまったんじゃないだろうか。佐々岡に好意を寄せすぎてしまったせいで、そんな不安が夢になってしまったんじゃないか。あれはすべて夢の話。
しかし、次の日の午前中のうちにゆかりは一気に現実に引き戻された。
「ちょっと、まだ学校行って2時間しか経ってないじゃない。具合悪いの…?」
さっき登校したかと思っていたのに、桜はすぐに家に帰ってきた。心配するゆかりを無視し、桜は自室にこもる。
「ねぇ桜ってば、どうしたの?」
桜は何も言わない。ゆかりの問いかけに、まったく答えない。また電話しないと、佐々岡に聞かないと。聞けばきっとわかる。担任に聞けばすべてわかる。
ゆかりはいつも通り、これまでしてきたのと同じように、学校に電話をかけた。
「もしもし、1年の小泉桜の母です、いつもお世話になっております。娘のことで少しお伺いしたいことがあるのですが、佐々岡先生はいらっしゃいますか?」
「小泉さん…ですか、お世話になっております。すみませんがその件につきましては教頭が対応させていただきますので、少々お待ちいただけますか?」
「…え、教頭先生ですか?そんな、佐々岡先生とお話がしたいのですが」
「恐れ入りますが佐々岡は現在席を外しておりまして」
「そんなわけないですよね。いまは休み時間のはずです。呼び出したら来てくださいませんか?佐々岡先生に聞きたいんです」
「少々お待ちくださいませ、まず教頭がお伺いしますので…」
「ちょっと!」
ゆかりが止めるよりも早く、受話器の向こう側からむなしく保留音が聞こえてきた。そうして10秒ほど経ってから出てきた教頭に、ゆかりは真実を告げられる。
「桜さんはきょう、佐々岡とお母さまの件で、クラスメイトと少しトラブルがありまして…」
「…なんのことですか?」
「お2人の写真の件です。佐々岡にも先ほど事情をすべて伺ったところ、真実だと認めました」
「待ってください、私はそんなの知りません…!」
後日、佐々岡は学校から姿を消した。噂に聞くところによると、佐々岡自ら退職を申し出たらしい。
桜はそれからも学校に行くことはなく、部屋にこもりきり。ゆかりはママ友たちからも距離を置かれるようになってしまい、少し外に出れば「ああ、あれが担任と不倫したっていう…」と噂話をされてしまう。
「なんでこんなことになったの…?」