後悔と絶望

image by:Unsplash
「ただいま…」
ふらふらと泣きはらした目で、ゆかりは自宅の玄関を開ける。その瞬間、勢いよくスマホが玄関に飛んできた。
驚いて顔を上げると、目の前には顔を真っ赤にして怒りをあらわにする桜が立っていた。
「また佐々岡先生の家に行っていたの!?ふざけないでよ、なんでこんなことになったのかわからないの!?お母さんのせいなんだよ!?」
玄関に落ち、液晶の割れた桜のスマホにはクラスメイトからの写真付きメッセージが表示されていた。
「お前の母親まだ不倫してるぞw」と、ゆかりが佐々岡の部屋の前で叫んでいる画像が貼り付けられていた。どうやら佐々岡の住むアパートのすぐ近くに、桜のクラスメイトが住んでいるらしい。
「違うの、これは最後の話し合いをしていただけで」
「もう言い訳はよせよ」
突然聞こえたのは、聞きなれた男性の声。ゆかりが驚いていると、リビングから夫が出てきた。
「あなた…」
「桜から連絡もらって、早退してきた」
「わ、私は」
「もう君の言い訳は聞きたくないよ。結局あれから一度も俺たちに謝ってくれなかったし、ずっと言い訳ばかり。反省している様子はどこにもなかったね」
「だって、仕方ないじゃない!もとはと言えばあなたが私に文句ばかり言うから…」
「そうだね、俺も悪かったのかもしれないね。でも、だからって不倫して、娘を追い詰めていいの?」
「それは…」
「君の罪は重いよ。娘の平和な学校生活を、君が奪ったんだ」
「私だけのせいじゃない…」
ポツリと呟いたゆかりを、桜が軽蔑した表情で見つめる。
「俺は離婚を考えてるよ」
「…は?」
「このままだと、桜の未来が壊れてしまう。君のせいで」
「そんな…」
ゆかりはようやく事の重大さを理解した。
しかし理解したときにはもう遅かった。いくらゆかりが後悔したところで、もう前のような暮らしは戻ってこないのだから。
- image by:Shutterstock
- ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
- ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。