ゆかりと佐々岡の関係をクラスメイト経由で知ってしまった娘の桜。ショックで家を飛び出した桜を迎えに行ったゆかりの夫も、妻の秘密を知ることになってしまう。
担任と不倫関係になってしまったゆかりを待っていたのは、取り返しのつかない現実だった。
第1話:娘の担任と学校で…20歳差の男女は、なぜ不倫関係になったのか?
第2話:年の差、20歳。「教師と保護者」から不倫関係に染まったキッカケ
第3話:取り返しのつかない現実
- 登場人物
- 小泉ゆかり:44歳主婦。この物語の主人公
- 小泉桜:13歳。ゆかりの娘
- 佐々岡:24歳。桜の担任
夫と担任が顔を合わせた日

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桜が警察に保護されたという連絡は、しばらくして学校にも行ったらしい。1本の電話のあと、10分もしないうちに佐々岡がゆかりの元にやってきた。
「桜さん、なんでまたこんな夜にゲームセンターなんて…喧嘩でもしたんですか?」
「いえ…そういうわけじゃ…いやでも、そうなのかな…」
佐々岡の顔をうまく見れない。
ゆかりはその場から逃げ出したくなる気持ちと、佐々岡になぐさめてもらいたい気持ちの板挟みになっていた。
こんなときまで佐々岡のことを考え、自分の保身に走ろうとするなんて。母親としての意識の足りなさに絶句する。
「ゆかりさん…」
佐々岡はゆかりの肩をそっと抱き寄せ、そのまま優しく背中をさすった。
「大丈夫、僕が仲介に入りますから」
それは無理だ。だってあなたも当事者なんだから。
ゆかりは素直にうなずくことができず、ただ佐々岡に抱きしめられながら、呆然と現実を受け止めるしかなかった。
20分後に帰ってきた桜と夫は、一緒に待っていたゆかりと佐々岡に軽蔑した視線を向ける。
「桜さん、心配したんだよ。何もなくてよかった…」
佐々岡が心配そうな顔で近づくのを、桜は思い切りにらみ返す。
「先生、娘に近づかないでくれますか」
接近する佐々岡を止めたのはゆかりの夫だった。
「聞きました、写真のこと。うちの妻との、不倫のこと」
「…は?」
佐々岡はポカンと口を開け、そしてゆかりの顔を見る。どういうこと?と、ゆかりに説明を求める。
「この写真。見覚えないですか?佐々岡先生ですよね」
夫はスマホの画面に1枚の写真を表示させる。先ほどゆかりも見た、不倫現場の写真だった。
「クラスのLINEに流れてきたみたいですよ。娘はこのことで、直接クラスメイトにもからかわれています。先生、これあなたですよね?うちの妻と、不倫してるんですよね」
淡々と事実を口にする夫を見て、ゆかりはどこか他人事のように感じてしまった。目の前で急に縮こまる佐々岡も、自分をにらみつける桜の厳しい視線も、すべて他人事に見える。
「こ、この写真は…誤解です。僕じゃありません」
声を絞り出し、佐々岡は写真を否定する。僕じゃない、勘違いだ、誤解だ、何かの間違いだ。そう言って必死に訂正する佐々岡の姿を、ゆかりはまたしてもぼんやりと眺めた。
「ここに証拠があります。これは紛れもない事実です。学校に電話させていただきます」
「学校に…!?待ってください、まずは話を聞いてください!」
「話をするならなおさら、第三者がいたほうが冷静に進みますよね。学校を交えたほうがスムーズだと思いますよ。現に娘は、そのことで嫌な思いをしているんですから」