子どもの学校生活で、保護者の頭を悩ませるものと言えば…PTA。面倒でやりたくないと思う人もいるかもしれませんね。
今回は、そんなPTA内で起きたちょっとした事件をご紹介。金髪の若いママに噛みつくボスママ風の女性…ただの自己紹介が、あっという間に不穏な雰囲気になってしまったようです。
- このエピソードは松田さん(仮名)からお聞きした話をもとに作成しています。
- 実在の人物や団体などとは関係ありません。
髪色の自由

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真っ赤なインナーカラーを、どうにかポニーテールをして隠す。
PTA学年総会のことなんてすっかり忘れて、昨日インナーカラーを入れてしまった。
「あれ、松田さん。インナーカラーいれた?」
クラス替え後、初めてのPTA学年総会。初めて役員になって緊張している私に、小学1年生のときに仲良くなった林さんが声をかけてきた。林さんも今年度初めて役員になったらしい。
在学中に一家庭一回は役員をやるというルール。面倒なルールだが、従いませんと意見をするのもめんどくさい。最近は「PTAは任意だから抜ける」という意見もあるが、そこに費やす労力もない。
「そう…ちょっと派手だよね、調子に乗っちゃったかも」
「そんなことないよ!めちゃくちゃ可愛い。実はね、私もこれ…イヤリングカラーっていうの?さりげなくいれてみたんだ」
林さんはそう言って、ツヤのあるダークブラウンのロングヘアをサラリと耳にかけた。耳元に、ほんのり明るいゴールドの髪の束が見える。
「仕事でガッツリインナーはいれれなくてさ、さりげなくって感じ」
「そっかそっか、よかった、私だけかと思ってた」
林さんの職業は看護師。職場の規則で、派手なインナーカラーは禁止されているそう。一方私は事務職。髪型の規則もそこまで厳しくない。
「でも派手かなって気にする気持ちわかる。髪色にぐちぐち言ってくるお母さんのエピソードとか、ネットでよく見るよね」
「でしょ?知らないお母さんばっかりだろうから怖いなって不安だったの。林さんがいて安心したよ」
「仲間がいれば心強いよね、私もちょっとホッとした」
林さんとクスクス笑っていると、突如会議室にどよめきが走る。金髪ショートカットのママが部屋に入ってきたのだった。
「遅れてすみません~」
彼女は私たちの2つ横の席に座った。
よく見ると耳にはいくつものピアスがついており、袖からちらりと見える手首にはタトゥーが掘られているようだった。
正直言って、私は「かっこいい」と彼女に言いそうになっていた。それは林さんも同じようだった。