ある日同窓会に足を運んだ主人公の真琴は、高校時代の元カレ・悟と再会する。受験をきっかけに別れてしまった2人だったが、悟の思いはまだ冷めていないようで…。
平凡な暮らしを送っていた真琴を襲う、執拗な愛の行方は一体。
第1話
- 登場人物
- 真琴:この物語の主人公
- 奈央:真琴の高校時代からの友人
- 沙也加:真琴の高校時代からの友人
- 梓:7歳になったばかりの真琴の娘
- 和明:真琴の夫
- 悟:真琴が高校時代に付き合っていた元カレ。同窓会で偶然再会する
元カノはずっと自分のことを好き?
「なんかさ、元カノはずーっと自分のこと好きでいると思ってる人いない?」
19:45
そろそろ飲み放題ラストオーダーのお時間です、と言われそうなタイミング。奈央のつぶやいたその言葉に、私たちはつい身を乗り出した。
にぎやかな居酒屋の一角で、ビールの中ジョッキを手に持ちながら。
「ああ、わかる。未練がましい人っているよね。元カノに限らずさぁ、自分に告白してきた女子はみんな自分のことをずっと好きだって思ってない?」
続いて声をあげた沙也加の言葉に、たしかにそうだなと私もうなずく。
高校生のときに告白した先輩が、半年後に「いまなら付き合えるけど、どうする?」と聞いてきたことがあったっけ。
都合のいい女として扱われている状況にうんざりしてしまって、好きだった人から嫌いな人に転落したな。
「そうじゃない人もいるでしょ、さすがに。夫が元カノ引きずってたら病むなぁ」
私の言葉に2人が「そうだよね」と理解の目を向ける。
「真琴の旦那さんは一途っぽいし、元カノのこといつまでも忘れられな~いってタイプではなさそう。だけど、うちの夫は元カノにもらったプレゼント大事に取っておいてたよ」
奈央の言葉に、飲もうと持ち上げた中ジョッキを思わず下ろす。
「捨て忘れてた、とかじゃないの?」
同じく動揺したのだろう、沙也加が言葉をかけた。
「そう思いたいんだけどさ…。多分、元カノが目の前に現れて誘ってきたら、この人浮気しちゃうんだろうなって。直感で思ったんだよね」
奈央の言葉が終わる前に、店員がやってくる。「ラストオーダーのお時間です」。
二軒目に行って詳しく話を聞きたいけれど、子どもと夫が待ってるし…と、しぶしぶお会計の準備をする。
私たちは年を取った。ライフスタイルもガラリと変わった。価値観だって丸ごと変わった。元カレに今更会ったってどうも思わない。復縁の可能性を考えて少しドキドキできたのは、独身時代で終わりだ。
でも、夫は?