久しぶりに見た元彼は、幸せそうな顔で知らない女性の隣に座っていた。ふたりの結婚を祝福するかつての友人たち。私は、そんな風にお祝いできない。
「結婚しました」

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「結婚しました!幸せな家庭を築きます」
久しぶりに見た、元彼のインスタ。彼は知らない女性の隣で、幸せそうに笑っていた。
つい3分前のことだった。男友達が「結婚式行ってきた、幸せになれよ」なんて写真をあげていた。タキシード姿に身を包んだ新郎と思われる男性とのツーショット写真に、思わず心臓が飛び跳ねる。
「これ、圭吾じゃん…」
3年付き合った元彼の顔を、時間が経ったとはいえ忘れるはずがない。まさかあいつ、結婚したの?ちょっとだけ嘘であってほしいと願いながら、私は元彼、圭吾のアカウントを探したのだ。
圭吾のインスタアカウントがあるのは以前から知っていた。「知り合いかも?」だなんて表示されるから、いやでも目に入っていたのだ。喧嘩別れしたわけじゃないけど、元彼のインスタを見るのは正直心が痛む。「知らない女の子との写真があったらどうしよう」とか、もう付き合ってもいないのに不安に感じていた。
しかし圭吾はあまりSNSが得意なタイプではなかったから、これまでごくたまにアップされていたのは、食べ物や風景の写真ばかり。誰と行ったとかどんなところに行ったとかも書いておらず、なぜか安心してしまう。
もう別れたはずなのに、心のどこかで「圭吾はまだ私を愛してくれている」なんて自己中心的に思っていた。もしかしたら気づいていないだけで「きっと復縁できる」と、心のどこかで考えていたのかもしれない。
それが、つい1年前の話。そしていま、久しぶりに見た元彼のインスタには結婚式の写真があげられている。元カノとしての謎のプライドや自信はズタズタに切り裂かれていった。
「大事な人たちにお祝いされてめっちゃ嬉しいです。みんなありがとう」
圭吾の書いたコメントに心のモヤモヤが止まらない。私はあなたの大事な人じゃないの?私にはお祝いする権利も与えてもらえないの?元カノを結婚式によぶなんて非常識かもしれないけど、私はその大事な人のなかに入ってないの?
タキシード姿の彼と、ウェディングドレスを着た知らない女性。くしゃくしゃの笑顔で幸せいっぱいに笑う圭吾の顔は自分だけのものだと思っていた。