カラダの関係から本命彼女になったものの、その後すぐに別れがきてしまった美波。さらに年上の男性、健太郎との交際が始まるが既婚者疑惑が浮上する。それと同時に、生理が2週間も遅れていることに気づいた。
自らのだらしなさを責める美波。恋も仕事もうまくいかない。そんな美波のもとに、同窓会の誘いが届いた…。はたして前に進むためのきっかけを、美波は見つけることができるのか?
第1話:浮気相手から本命に昇格?カラダだけの関係からスタートした私は幸せになれるのか
第2話:逆ナンしてもいいですか?彼氏にフラれた私が見つけた最高な男の正体
第二話:自分を大切にすること
- 登場人物
- 美波:この物語の主人公
- 海斗:美波の元カレ
- 健太郎:美波が逆ナンして付き合った彼氏。既婚者疑惑が浮上中
後悔と再会

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「妊娠したかもしれないの」
健太郎さんに送ったメッセージは、かれこれ3日既読がついていない。電話も掛けたがつながらない。
「着信拒否とブロックのダブルコンボかぁ…きっつ」
そう言いつつも、手遅れになる前にこうなってよかったのかもしれないとも思う。
知らないうちに不倫相手になっていた。気づきませんでした、知りませんでした。そう言って済んだとしても、彼の妻が私の存在を知ったときに傷つかないはずがないだろう。
これまで海斗のカラダの友達兼浮気相手をしていたときとは訳が違う。不倫と浮気じゃ、行為の重さが大きく違うように感じた。もちろん、どちらも許された行為ではないのはたしかだが…。
スマホをテーブルのうえに置いて距離を置く。これ以上健太郎さんのことを考えても仕方がない。
薬局で買ってきた妊娠検査薬の箱を開ける。生理はまだ来ない。
「気をつけてたんだけどな…」
不安が入り交じるなか、トイレで検査薬の結果を待った。自分のだらしなさをいまさら責める。どんな人かもわからないのに付き合って、簡単にカラダを許して、挙句の果てに妊娠かも…だなんて。
赤ちゃんができたらどうする?1人で育てられる?こんな私に、できるの?
数分後、検査薬で陰性だとわかると急に身体の力が抜ける。
「もっとちゃんとしないとダメだ…。もうアラサーじゃん」
自分で自分に言い聞かせるようにつぶやく。できていなかったからよかった、ではない。命を大切にできる自信がないのなら、そもそもそんなリスクを冒してはいけない。
高校の同窓会の誘いが来たのは、それから2日後のことだった。失恋が続いてなかなか気乗りはしなかったが、一次会だけならと顔を出すことに決める。
仕事もうまくいかない、恋も思うようにできない、だけど前に進むことはできる。止まったままでいるより、少しでも外に出たほうがよいと思ったのだ。
「美波は仕事どう?IT関連だっけ」
「そう、おかげさまでなんとか…失敗ばっかりだけどね」
「みんなそんなもんだよ~。私も後輩ができて焦りすぎて、ひっどいミスしちゃったし…」
「わかる!抜かされたらどうしようって焦っちゃうんだよね。落ち着いて仕事しようと思っても、うまくいかなくて」
「期待と実力がかみ合ってないんだよね。いろんな責任を一気に背負わされるようになってきて、大事なことなんだろうけど気持ちがついていかないよ」
「同年代で頑張ってる人見ると余計焦るし」
安堵した。みんな同じように焦っていた。私だけじゃ、なかった。
自分だけ仕事ができなくて、前に進めなくて、失敗ばかりなんだと思っていた。見放され、愛想をつかされ、もう必要ないと言われているんだと思っていた。でも、みんな同じように悩んでいた。
「美波さん、頑張ろうね。わたしたち」
学級委員長だった田中さんが隣の席から声をかけてくれる。秀才と呼ばれていた神田くんも、スポーツ万能だった美羽ちゃんも、高校生クイズ選手権でファイナルまで進んでいた持田くんも。みんな同じように悩んでいた。
晴れやかな気持ちをどん底に突き落とされたのは、その後数分してから私がお手洗いに立ったときだった。
「あれぇ、美波じゃん。久しぶり」
聞き慣れた声にビクリと肩が震える。声の主は…
「海斗…」
「何してんの?合コン?あ、もしかして新しい夜の友達探しとか?」
「は?違うし」
「カラダの関係なら俺に声かけてよ~!またなってあげよっか」
せっかく立ち直れそうになっていたところに、遠慮なく泥を投げ込まれているようだった。