結婚2年目。周りに羨ましがられるくらいの仲良し夫婦。ただ、主人公の真琴は、度々女性と2人きりで飲みに出かけるようになった夫の康介に最近不満を感じていた。
「飲みに行かないで」と伝えた真琴に対し、夫の康介はしぶしぶ了承。しかし飲み会から帰ってきた康介の携帯に届いたのは、先ほどまで康介が女性とふたりきりでいたことを示すメッセージだった。
思わぬ現実を突きつけられた真琴。そんな彼女に追い打ちをかけるように、康介の裏切りが迫りくるのだった…。
第1話:W不倫からの再婚…「修羅場女」とアヤしい仲の夫が放った衝撃的な一言
第2話:夫の嘘と真実。そして、妻の覚悟
- 登場人物
- 私:この物語の主人公
- 康介:「私」の夫
- リコ:康介の職場の先輩
- 小野寺:康介の職場の後輩
不倫疑惑

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目の前でイビキをかいて寝ている康介を、これほどまでに叩き起こしたいと思ったことはない。スマホのメッセージがあざ笑うかのように、私の心を揺さぶる。
私に「会社の人と飲みに行く」とわざわざ嘘をついてリコと飲みに行っていたんだ。「怪しまれないようにね」と言うのは、怪しまれるようなことをしていたから?
嘘をついてまで一緒にいたいなんて…それはもう、疑わずにはいられない。
「不倫、してるの?」
ぽつり。寝ている康介の顔に呟く。私の声などまったく聞こえていない。彼はスヤスヤと夢のなかなのだから。
次の日、二日酔いで頭が痛いと言いながら起きてきた康介を、問い詰めてやろうかと何度も思った。でもできなかった。怖かったのだ。何かが壊れてしまいそうで。冷め始めてしまった自分の気持ちに気づいてしまいそうで。
すべて勘違いであってほしい、夢であってくれ。「あれは結局なんだったんだろうね」と笑いあえる日常が、あしたになれば戻ってくる。そう思っていたのに。
ふとスマホを見ている康介の後ろを通ったとき、それは願望にしか過ぎないんだと悟った。
メッセージ画面に表示されていたのは「リコ」の文字。内容まではわからなかったが、リコとやり取りをしているのは明らかだった。
「怪しまれなかったよ、大丈夫だったよ、あいつは何にも気づいてないよ」そんな返事でもしてるのかな。モヤモヤとした不安が、ぎゅう、と心臓を押しつぶしていく。
もし次、飲み会に行くと言い出したら。そのときはこっそり現場に突撃してやろう。康介の嘘を暴いてやろう。
でももし本当に不倫だったら…。頭に浮かぶ「離婚」の2文字がますます私を苦しめた。
モヤモヤとした気持ちを抱えながら、2週間が過ぎた。結局康介はその後飲み会にはいかず、会社からまっすぐ帰ってくるようになった。
リコのメッセージが見間違いだったんじゃないかと思うレベルで、リコの話すらしなくなった。
158247「来週の金曜日、ワールドカップじゃん」
土曜日の夜。一緒に作ったスパイスカレーを食べながら、康介がふと話しかけてきた。
「そうなの?」
「そう。それでさ、会社の人とスポーツバーでサッカー観戦しようって話になってるんだよね」
「会社の人?」
「うん。小野寺とか、スポーツ好きのメンバーで」
「ふーん…」
一瞬リコの顔が頭をよぎったが、すぐにかき消された。康介はサッカーが大好きだ。小野寺くんも一緒なら安心だろう。そこに嘘はなさそうだと判断した。
「いいんじゃない?私サッカーよくわからないし、会社の人と見たほうが楽しいと思う」
「ありがとう。助かる」
ホッとした顔で笑う康介を見て、なんだか申し訳なくなる。自由に遊びに行けない環境にしてしまっていたのかな、束縛っぽくて嫌だったのかな。
しかし、そんな感情はすぐに消える。だってリコと嘘ついてまで飲んでたんだから仕方ない。それくらい束縛するでしょ。
「ねぇ、リコさんはいないよね?」
「いないよ!小野寺に聞いてくれてもかまわないから」
「わかった」
これだけ言うなら大丈夫、と自分に言い聞かせる。なんとなく感じていた嫌な予感を、知らんぷりするように。