夫、直樹が病室で不倫している現場を目撃してしまった妻の直美。新人看護師の中塚悠里との不倫現場をカメラに収めたものの、直美の怒りは止まらない…。
やっと退院してきた利樹を前に、直美は再構築するべきか、離婚するべきかを悩む。
「もし退院後に連絡を取り合ってなかったら、再構築も考えよう」そう思いスマホをのぞいた直美だったが、妻を待っていたのは衝撃的な事実だった。
第1話:新人看護師とカーテンの裏で…妻が驚愕した入院中の夫のありえない行動
第2話
- 登場人物
- 大村直美:この物語の主人公
- 大村利樹:直美の夫
- 中塚悠里:夫の入院先の看護師
- ※登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
「シタ夫」と再構築できるか、確認したかった

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スマホに保存された不倫現場の写真は、私をしばらく苦しめた。
どれだけおいしいランチの写真を撮っても、好きなアイドルの写真を保存しても、キレイな夕焼けの写真を撮っても、カメラロールの隅にちらりと写る不倫写真が目につく。たった1枚の写真が私の気持ちを押しつぶし、感情を狂わせる。
それでも私は怒りや恨みを無駄にしないよう、証拠を突き付けるXデーまで大事に写真を保存しておいた。
そして利樹が退院する日がやってきた。
「はぁ~、やっと我が家に帰ってこれたよ」
中塚と不倫していたのを私が知っているなんて、夢にも思っていないだろう。ドカッとソファーに腰を下ろし、利樹はうれしそうにリビングを見回している。
「おかえり、退院おめでとう」
口角を上げてみる。うまく笑えているだろうか。
私は決めていた。退院して、利樹が中塚との連絡をとっていなかったら、不倫の証拠だけ突き付けて説教して終わりにしようと。利樹の反応次第ではまだ再構築の余地はある。
しかし、もしも中塚との連絡が退院後も続くのなら、2人ともコテンパンに追い詰めて離婚届を突きつけてやる。そう、決意していた。
利樹が本気で不倫なんてするはずないと思いたかった。入院中の寂しさや虚しさで、看護師との不倫に走ってしまったんじゃないかと思いたかった。
「家の風呂入りたいな」
「じゃあ湯舟貯めてくる、待ってて」
「一緒に入る?」
「いやだ、1人で入ってよ」
ちぇ、と口をとがらせる利樹に「気持ち悪い」と言いそうになってしまった。中塚とキスしてた口でよくそんなことが言えるな。
こんなんで再構築なんて考えられるのだろうか。不安が頭をよぎるが、それは利樹のスマホを見てから決めよう。連絡を取り合ってないとわかったとき、私がどう思うかを大事にしよう。
利樹がお風呂に入っているとき、私はコッソリとスマホをのぞいた。
暗証番号は変わらず、私たちの結婚記念日。番号が変わっていたらショックだっただろう。でも変わっていなかった。そこで私は少し、安心してしまった。
しかし次の瞬間、メッセージアプリの一番上に表示された「来週のデート楽しみにしてるね」という言葉が私の安心をすべて打ち砕いた。再構築できるのかな、なんて呑気な疑問もすべて消えた。
メッセージの送り主は、あの看護師、中塚悠里だったから。
「はは、そう。まだ不倫を続ける気なんだね」
浴室からは利樹の鼻歌が聞こえてくる。まさか不倫がバレているとも知らず、しかもそれを隠そうともせず、楽しそうに歌っている。
離婚しよう。人の心配をよそに、看護師と関係を持ってしまった利樹を許せるとは思えなかった。
「もっと言い逃れできない証拠を集めなくちゃ。キス写真だけじゃ不倫とは言えないもんね」
いますぐ怒鳴って殴りかかりたくなる気持ちをこらえ、私はさらなる証拠集めを決意した。