仕事帰りに立ち寄ったコンビニで、私は店員に一目惚れする。どうすれば、この恋が実るんだろう。
これは、私・立花まおと、店員・佐藤さんの出会いを描いた、少し前の物語。
出会いは、どこに転がっているかわからない

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自宅から歩いて3分のところにコンビニができた。会社帰りにも立ち寄りやすいし、ひとり暮らしにはありがたい。
疲れてやる気が出ないときは自炊もしたくないし、スーパーはちょっと遠いし、お弁当屋さんは食べ飽きちゃったし…。といいつつも、オープン初日に行ったきり、なかなか行く機会はなかった。
時刻は18時半。通り過ぎかけたコンビニの自動ドアに「肉まんリニューアル!」と書かれたポスター。仕事帰りの疲れた体は正直で、タイミングよくお腹が鳴る。たまには肉まんもいいかも。きょうは金曜日だし、帰ったらチューハイと肉まんで晩酌かな。
新発売のチューハイをかごに入れて、レジに並んで肉まんを注文。「袋もらってもいいですか」。店員さんが無言で小さな袋をレジ下から出す。「電子マネーで払います」というと、次は少しけだるそうに「はーい」と返事。なんかダルそうな店員さん…と顔を上げると。
「えっ」
どうしよう、驚きすぎて声が出てしまった。心臓がバクバクする。外見が、私のタイプドンピシャだ。
「あの」
「え?」
「袋、わけますか?」
「あ、じゃあチューハイだけカバンに入れます」
突然話しかけられてあたふたする私を尻目に、テキパキとお会計を済ませる店員さん。
「ありがとうございましたー」
袋を受け取ってコンビニを出る。
「めっちゃタイプだった…」
心臓のどきどきが止まらない。めちゃくちゃダルそうな店員さんだったけど、すっごいかっこいい。私が人生で出会った男性のなかで、一番タイプな見た目をしてた。これは一目ぼれかもしれない、いやでも、ただかっこよかっただけだし…。
「お客さん!」
声をかけられて後ろを振り向くと、あの店員さんが私を追いかけて走ってきてた。
「チューハイ、忘れてますよ」
「あ、すみません…」
「よかった間に合って、それじゃ」
店員さんはニッコリ笑い、また走ってコンビニに戻っていった。その笑顔が頭から離れないまま翌朝までずっとドキドキしていた。たぶん、人生で初めて一目ぼれをした。