そのとき、私は親友のことを得体のしれないモンスターだと思ってしまった。私の家族をひっかきまわし、楽しんでいた彼女を見て、もはや怒りではなく恐怖を感じてしまったのだ。
- おもな登場人物
- 私(りか):この物語の主人公。父、母、兄と4人で暮らしている
- 洋一:「私」の2歳年上の兄
- あきこ:「私」の親友。洋一に憧れている
私の親友

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あきこと知り合ったのは、高校生のころ。家も近く、趣味も似ていたためすぐに意気投合。私たちが親友になるのに、そう時間はかからなかった。気づけばお互いの家に泊まりに行くほど仲がよくなり、大学まで一緒だった。
あきこの黒くて長い髪はよく手入れされていて、とても美しい。いつも身だしなみに気を使っていて、キレイなあきこがわたしは大好きだった。
そんなあきこのようすがおかしくなり始めたのは、大学1年生のころだった。
高校生のころから付き合っていた彼氏に浮気をされ、振られた。そのときのあきこの取り乱しっぷりは、壊れちゃうんじゃないかと思うほど異常だった。
それと同時に、どこかで納得している自分もいた。あきこは自分の容姿に自信を持っていたから、少し傲慢なところがあったのだ。きっと、ほかの誰かに恋人が取られるはずなんてないと思っていたんだろう。
だから「外見だけじゃなくて、中身も大事なんだよ」と思い切ってあきこに言ったとき、心がすごく晴れやかになった。あのときのあきこの恨めしそうな顔を、私はざまあみろと思って見ていた。
「お兄ちゃんが免許取ったから、ドライブに連れてってくれるっていうんだけどあきこも一緒に行かない?」
ある日のそれは、ごく自然な遊びの誘いだった。
私の2歳上の兄、洋一が車の免許を取った。中古の軽自動車を買って、運転に慣れ始めたころ、私とあきこをドライブに誘ってくれたのだ。
高校生のころから、あきこはなんとなく兄に好意を抱いているように感じていた。「お兄さんかっこいいよね」そう言っていたあきこの言葉がずっと耳に残っている。
当日ドライブに現れたあきこは、とにかく楽しそうだった。助手席に乗せると、少し顔を赤らめていた。だから「やっぱ兄のことが気になっているんだな」と思った。あのときあきこを隣に乗せたのを、私はいまでも後悔している。