二重整形や鼻整形など数々の施術を経て、だんだんと自分の顔に自信がついてきた美月。しかし久しぶりの良晴とのデートで、美月は悲しい言葉を告げられてしまう。
さらに整形費用のためにパパ活サイトへと登録した美月は、出会った男性から予期せぬ誘いを受ける。美月の進む未来は一体…。
第1話:男は結局「すっぴん美人」なのか?尽くす女を最悪な形で男が裏切った理由
第2話:浮気男の「二股相手」の職場に乗り込んで…「サレ女」が放ったまさかの一言
第3話:すべてが明らかになった日
- 登場人物
- 美月:この物語の主人公
- 良晴:3年間付き合った美月の彼氏
- 翔(かける):美月の幼馴染で良晴の親友
- 沙織:良晴の二股相手の女性
気づかない男

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美月と良晴が久しぶりにデートをしたのは、鼻整形から3カ月後のことだった。仕事終わりに少し顔を合わせたりビデオ通話をしたりはしていたが、きちんと時間を作ってデートをしたのは春ぶりだった。
「ねぇ」
「ん?」
美月の顔を見ても何も言わない良晴に、美月はいよいよ限界を迎える。
「何か変わったと思わない?」
二重整形と鼻整形、ヒアルロン酸注入、美肌施術。努力を重ねたいまの美月は、前よりも化粧が薄くなった。ハッキリとした顔立ちに近づき、前よりうんとかわいくなったと自分でも思う。
美月はデート前に鏡を見て、「これなら良晴も私だけを見てくれるようになるはず」と確信していた。
しかし久しぶりに会ってから2時間経っても、良晴は一切美月の外見にコメントをしない。ようやく飲食店に入り向かい合って座っても、ちっとも気づかない。マスクをつけていたからだろうかと外してみても、まったくアクションがなかった。
「なんか変わったの?ああ、髪型変えた?」
「そこじゃなくて…」
「えーじゃあなんだろう。わかんないなぁ、ごめんね」
少し申し訳なさそうに笑う良晴に、思い切って美月は告白した。
「二重整形してみたの」
「え?整形?うそ」
「ほら、アイプチしてない」
「アイプチって何?」
「えーっと、二重にするのりをまぶたに塗ってたの」
「へぇ…そうなんだ。ごめんね、よくわかんないや」
そもそも美月が一重で、わざわざ二重のりをつけていたことすら良晴は知らなかった。きっと美月のすっぴんも覚えていない。美月のすっぴんに「化粧していたほうが可愛いね」と言ったことすら覚えていないのだろう。
「あとは?何か気づかない?」
鼻も高くなったのよ、口角も上がったでしょう?おでこもまるくなったし、肌もキレイになった。最近ホワイトニングもはじめたのよ。お金は少しかかるけど、努力の成果が出てるよね?
美月は良晴が気づいてくれるだろうと、期待していた。しかし、
「ごめん、わかんない…いつもの美月だよ」
がっかりした。何も気づいてくれない良晴に、美月は悲しくなる。
「気づく、でいえばさぁ…最近美月、忙しいんだね」
「え?」
「デートの約束してもドタキャンされること多いし、土日は大体忙しいし…何かあるの?」
「ああ、ちょっとジム通いとか始めたし、仕事も忙しくて」
嘘だ。本当はパパ活を始めたからだった。土日はほとんどパパと会う時間に使っていた。お金を稼がないと整形費用は全然足りない。可愛くなるにはお金がかかる。
良晴のために努力しているのだから、パパ活のためにデートの予定の約束をキャンセルするのは仕方のないことだと思っていた。
「すれ違いが多いなって…こんなに会えないなら、一緒にいる意味ないんじゃないかなと思うよ。もう俺たち潮時なのかもね」
良晴の思わぬ言葉に、美月は身を乗り出した。
「嫌だ、別れたくない!」
大きな声がでた。すぐに飲食店にいたことに気づき、美月は声を小さくする。
「ごめん、気をつける」
「ううん、忙しいのに俺のほうこそごめんね。でも恋人同士なんだから、もっと時間作ってほしい」
だって、お金を稼がないといけないんだもん。そこまで言葉が出て、グッと飲み込んだ。
そもそも、二股をかけているくせによくそんな偉そうに言えるわねと、美月は後になって思うのだった。