愛情を得るための我慢
アルコールや薬物などの中毒状態の親は、お酒を飲んでいないときや、薬物を使用していないときは、まるで別人かのように優しくなったりすることがあります。
親からそうした極端な二面性を見せられ続けた子どもは、ときに、「苦痛と愛情はワンセット(交互)で与えられるものだ」という自虐的な思い込みを、あたかも真実かのごとく信じてしまうことがあります。
悩ましいですね…。
実際、夫からDVを受けていたある女性は、「夫が暴力的になるのは私に落ち度があるからで、本当は愛情深い人なんです。なので、夫をどうにかしたいわけではなく、夫から怒られないように自分の落ち度を改善したいのです」と相談しにきました。
この女性は、身体中のアザの数や罵倒される言葉の数こそが夫からの愛の証であり、自分が夫からの愛情を感じるためには、暴力などの苦痛を伴う必要があるといった、「愛情と暴力はセットで与えられるもの」と本気で信じていたのです。
ただでさえ幼いころからのヘビーな環境によって、普通の子どもなら受け入れがたい苦痛に対しても、「耐性」「許容力」があったりするわけですが、そこに輪をかけて、「愛情をもらうためならいくらでも苦痛を我慢する」という生活が当たり前のようになってしまうことがあります。
もしもあなたがそういう養育環境ではなかったとしても、少しだけ当事者になったつもりで考えてみてください。
破滅的な環境で育った人は、こうした背負わなくてもいいいろいろなものを背負った上で社会に出ていくわけです。なのに、社会に出れば、あたたかい家庭で育った人と同じ土俵で競争することを求められたり、同じ責任を負わされたり、同じ結果を出すことを要求されたりする…。
これって、相当酷なことだとは思いませんか?
今回は、アルコールやギャンブルなど、なんらかの中毒状態、依存状態などの親(家庭)を「私がなんとかしなければ」などと考え(あるいは強要され)、実態は崩壊している家庭を維持するための涙ぐましい努力をすることで、本来なら子どもが背負う必要のない重荷を背負わされ、それらにエネルギーを消耗させられた子どもは、本来育んだ方がいい健全な感情を育むことや、基本的な欲求を満たすことにエネルギーを向けることがかなり難しくなり、その結果、情緒的に心に闇を抱えるようになるという、超ヘビーな内容でした。
次回は、毒親育ちが「人を信じたり心を開いたりできない理由」をお届けします。
次回の『「毒親の呪縛」を本気で断ち切る実践トレーニング』は2021年8月11日公開予定です。
【連載】『「毒親の呪縛」を本気で断ち切る実践トレーニング』
【1】「生きづらさ」の根本にあるものは…?私の幸せを阻む「毒親」の呪縛
【2】私は「毒親」育ちだったのか?いま、生きづらさの原因を考える30の質問
【3】親の不仲も不機嫌も「自分が悪いせいだ」と思って育った、毒親育ちの人へ
【4】毒親に言われ続けた「あなたのため」。その支配から抜け出すための、はじめの一歩
【5】わけもなく不安になる。毒親育ちが無意識の苦しみを手放すためのワーク
【6】人が怖い、居場所がない、価値がないetc…毒親育ちの持つ悩ましい感覚
【7】私は何をやってもできない人だ。毒親育ちの悩ましい思考の手放しかた
【8】だから僕は、人が怖い。毒親育ちが「生きづらい」人生から抜け出すまでの道のり
【9】離婚したのは、僕のせい?「親の離婚」で傷ついた心の癒し方
【10】それって本当に子どものため?親の「責任」と「過干渉」のボーダーライン
【11】家庭内につくられたヒエラルキー。子どもを弱者に仕立て、支配する親たち
【12】対人関係がシンドイ。側から見ると順風満帆な彼の人生が“難あり”なわけ
【13】支配的な父親に従ったエリート役員の人生が、中年期に危機を迎えたわけ
【14】父親のDVは家族だけの秘密。なぜ毒親家庭は崩壊していくのか?
【事例1】鬱の母と、子に頼る父。毒親と共依存していた彼女が、親子の縁を断ち切るまで
【事例2】気づけば、3度目の離婚。彼女が「ダメンズ」ばかりを選んでしまったワケ
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