夫の元嫁のSNSアカウントを発見したさつきの脳裏には、「離婚」の2文字が浮かび始める。
いまのままの暮らしを送り続けるのか、それとも新しい人生をスタートさせるのか。悩み続けるさつきを、蓮はまたもや理不尽に無視する。
そして自分の気持ちを蓮に伝えることにしたのだが…。
第1話:「あなたのご飯、しょっぱいのよ」目の前でおかずを捨てる姑と夫に嫁は…
第2話:「嫁にいじめられている!」嘘つきな姑と夫が隠していた衝撃の事実
第3話:制裁
- 登場人物
- 門倉さつき:この物語の主人公
- 門倉蓮:さつきの夫
- 玲奈:蓮の元妻
ついに告げた「離婚してください」

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蓮との今後を考えたとき「離婚」以外の選択が、もう何も思い浮かばなくなっていた。
無理してこんな結婚生活を送る理由なんてどこにもない。それに、そのうち子どもができたら?こんな父親とおばあちゃんだなんて絶対に嫌。でも、こんな簡単に離婚を選択するのは間違ってるんだろうか。
私の決意が固まったのは日曜日の夜だった。お風呂上がりに髪を乾かしていると、突然蓮に声をかけられる。
「ドライヤー、うるさいんだけど」
「え、ごめん…」
「やめてくれない?迷惑」
「もうすぐ終わるから」
「やめて、うるさいから」
「いや、だからもう終わるって」
慌ててドライヤーをかけ始めると、大きな舌打ちをして蓮がリビングへ消えていく。バン、と大きな音を立ててドアを閉め、「うるせぇな」と大声を出した。
胃がズキズキするのを感じながら、急いで髪を乾かしてリビングに戻った。
「ごめんね、もう終わったよ。何かテレビでも見てたの?」
返事がない。また無視されているようだ。
「…あのさ、その…無視するのやめてくれない?」
蓮の視線はスマホに向いたまま。
「ドライヤーがうるさかったのは申し訳ないなって思うけど、それだけで無視されるのはちょっと…おかしいと思うよ」
こちらのことなんて、ちっとも見ようとしない。
「その態度がそのまま続くんだったら、私もう一緒に暮らせない。離婚したい」
「は?離婚?」
蓮が急に顔を上げた。なんだ、話聞いてるんじゃん。
「うん。無視され続ける生活なんて無理。理由も話してくれないし、前の奥さんと比べるのとかも嫌だ。ご飯捨てられるのも耐えられない」
「はぁ…なにそれ」
うんざりした顔で蓮はスマホをポケットにしまい、立ち上がった。
「お前のせいだろ。お前が出来損ないだからいけないんだろ。離婚?そんなの絶対に許さない。簡単に離婚できると思うなよ。どうせ離婚したところでお前は幸せになれないんだから」
ああ、もうダメだと思った。心のなかの糸が、プツリと切れた。
元妻に接近

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自分でもおかしなことをしているとは思っていた。しかし気になってしまったのだ。このSNSアカウントのレイナさんが、本当に蓮の元嫁の玲奈さんなのか。そして、どうやって離婚できたのか。
3日ほど考えてようやく送ったDM。もう1年も更新されていないアカウントだったから返事は期待していなかったが、想像よりも早く返事が届いた。
『はじめまして。あなたのおっしゃるとおり、私は蓮の元嫁です。まさかいまのお嫁さんからDMが来るなんて思っていなかったのでびっくりしてしまいました。私と蓮との離婚について知りたいとのことですが、つぶやきに書いてあることがすべて…ですね』
本当に玲奈さんだった。その後もメッセージが続いている。
『蓮のひどいモラハラと姑からの嫌がらせでうつ病になってしまい、離婚も何度も拒否されたので、弁護士の力を考えてどうにか調停離婚しました。なかなか調停でも話がかみ合わなくて大変だったんですけど、最終的には慰謝料半額で応じてくれた感じです』
「調停って…家庭裁判所で調停員さん交えて話すやつだよね…?」
『いま、あの姑と同居してるんですね。すごい…私は絶対無理です。もし離婚するのでしたら話が通じないので、弁護士の力を借りるのをおすすめします』
どうにかして離婚ができた。そんな玲奈の苦労が伝わってきて、それと同時にぎゅう、と胃が痛くなった。
やっぱり私も、簡単に離婚できるわけではないのか。だったらいっそ、思い切りぎゃふんと言わせてから離婚したい。