「親が正しくないはずはない」という思い込み
なぜそのようなことになるのかといえば、幼い子どもにとって親という存在は、正しくて万能な存在なので、そんな親に対して「この親は、どうやら親として未熟で間違っている」などと考えるのはかなり難しいからです。
でも、それでは自分が虐待を受けることの理由がない…。
そこで、「自分になんらかの落ち度や欠点、問題があるからだ」「親が虐待するのは、問題のある自分をなんとかしようとしているからだ」などと、ある意味「苦し紛れの嘘」で、辛い現実を自分なりに受け入れようと工夫するわけです。
そうやって、思い込んだ「嘘」は大人になってからも、ずっと心の中にこびりついてしまい、自分らしく生きることを阻害します。
そのため、毒親のもとで愛着を感じることなく育ってきた人は、人との絆や愛情に欠乏感を持ちながらも、それを信じることがなかなかできずにいることも少なくありません。
さらには、「自分は悪い人間」であり、物事がうまくいっていないのは「自分のせい」と、背負わなくてもいい自己嫌悪や罪悪感を、どんどん背負いこんでは苦しんでいたりします。
自分を“悪者扱い”しがちな人の対処法
大人になって毒親の支配下から逃れていたとしても、心の中では、「自分はダメな人間であり、こんな自分はいい人間関係なんて作れない」「誰も自分のことなんて相手にしてくれないし、認めてなんてもらえない」など、自分自身に対する自己信頼感や、他人への安心感がとても薄く、一方では不安や恐れ、怒りなどのネガティブな感情に伴う問題を抱えるようになることもあります。
特に、「時に優しさや愛情を垣間見せる毒親」の場合、その子どもは余計に「自責の念」を強めてしまうほかに、「親は私のことを本当は愛している」ということを信じてしまうことで「虐待を許容してしまう」ということが起きることも少なくありません。
たとえば、いつもは暴力的な親がある日「お前は本当に大切な子どもだ」ということを言って、突然抱きしめてくる…。
こうしたことを一度でもされた記憶のある子どもは、「本当に大切な存在である私に、ぶったり蹴ったり酷いことをするということは、やっぱり親から見たら私がまだまだ悪い子だからだ」と考え、それを信じてしまうのはある意味仕方がないことです。
自然に「自分は悪い人間」であり、物事がうまくいっていないのは「自分のせい」などと、背負わなくてもいい自己嫌悪や罪悪感を、どんどん背負いこんでは苦しんでいるという人もいるのではないでしょうか。
そのような方は、出来事を体験した際に「これが起きたのは私のせいだ」「こういう結果になったのは私のせいだ」などと、すぐに自分のことを悪者扱いするのではなく、「これこれこういうことが起きた。以上」「これこれこういう結果になった。以上」などと、事実だけを客観的に受け止めるということに意識を強く向けてみることで、反射的に「自分が悪い子だから」という、毒親の呪縛に抗う練習を続けてみるといいと思いますよ。
次回の『「毒親の呪縛」を本気で断ち切る実践トレーニング』は2021年10月13日公開予定です。
【連載】『「毒親の呪縛」を本気で断ち切る実践トレーニング』
【1】「生きづらさ」の根本にあるものは…?私の幸せを阻む「毒親」の呪縛
【2】私は「毒親」育ちだったのか?いま、生きづらさの原因を考える30の質問
【3】親の不仲も不機嫌も「自分が悪いせいだ」と思って育った、毒親育ちの人へ
【4】毒親に言われ続けた「あなたのため」。その支配から抜け出すための、はじめの一歩
【5】わけもなく不安になる。毒親育ちが無意識の苦しみを手放すためのワーク
【6】人が怖い、居場所がない、価値がないetc…毒親育ちの持つ悩ましい感覚
【7】私は何をやってもできない人だ。毒親育ちの悩ましい思考の手放しかた
【8】だから僕は、人が怖い。毒親育ちが「生きづらい」人生から抜け出すまでの道のり
【9】離婚したのは、僕のせい?「親の離婚」で傷ついた心の癒し方
【10】それって本当に子どものため?親の「責任」と「過干渉」のボーダーライン
【11】家庭内につくられたヒエラルキー。子どもを弱者に仕立て、支配する親たち
【12】対人関係がシンドイ。側から見ると順風満帆な彼の人生が“難あり”なわけ
【13】支配的な父親に従ったエリート役員の人生が、中年期に危機を迎えたわけ
【14】父親のDVは家族だけの秘密。なぜ毒親家庭は崩壊していくのか?
【15】愛情と苦痛はワンセット。大人になっても抜けない毒親育ちの思い込み
【16】いい親子関係を築けなかった子は、友人関係や恋愛でつまずきがちなのか?
【17】親に“いい子”の期待を押し付けられた子は、なぜ人生につまづいてしまうのか?
【18】家族のからかいがイジメに。自称「ダメ人間」な彼女の、悲しい生い立ち
【19】「無条件の愛」を与えられずに育ったあなたが、心の空洞を埋めるヒント
【20】東大に行け、官僚になれ…親に命じられた“責務”を全うしたエリートの「その後」
【21】毒親の呪縛を抜け出し「自分らしく生きる」ために、今日からできること
【22】僕は、どうせ無力で無能…。自己肯定感が「ない」子どもたちの苦悩
【23】虐待する親によくある4つの特徴。なぜ彼らは子どもに手をあげてしまうのか?
【事例1】鬱の母と、子に頼る父。毒親と共依存していた彼女が、親子の縁を断ち切るまで
【事例2】気づけば、3度目の離婚。彼女が「ダメンズ」ばかりを選んでしまったワケ
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