では、先ほどの毒親の4つの反応についてひとつずつみていきましょう。

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1.否認、矮小化
これはトラブルごとが生じた際に、毒親が真っ先に反応する典型的な行動といえます。
マンツーマンのセッションをしているクライアントのかたの多くは毒親育ちだったりするのですが、その毒親の呪縛から自分を解き放つために、「過去のネガティブ体験と本音を親に話す」というチャレンジをしてもらうことは少なくありません。(もちろんチャレンジできる状況を確認して、十分に準備をしてからですが)
僕のこれまでの経験上、
- 過去の辛かった体験
- 悲しかった体験
- 悔しかった体験
- 恥ずかしかった体験
- 頭にきた体験
などを、勇気を出して真剣に、涙を流しながら親にぶつけたとしても、9割の親は真っ先に、この「否認、矮小化」で、まずは反射的に抵抗します。
具体的には、「そんなこと記憶にない」「覚えていない」「あれはそんなつもりじゃない」「もう終わったことだ」「私がされてきたことに比べれば、そんなことは大した問題じゃない」などなど…。
場合によっては、子どもが勇気を振り絞って真剣に向き合おうとしている姿を、笑って誤魔化そうとしたり、「もっとポジティブに考えなきゃだめじゃないの。そんなだからあなたは…」と、さらにマウンティングし尊厳を傷つけようとする親も…。
本当にどうしようもないですね…。
2.隠蔽の強要、問題のすり替え
これもよくある反応といえます。
たとえば、親がギャンブル中毒で借金を重ね家にお金が全然ないというとき、親は「子どもが嫌いだから、絶対に友だちを連れてくるな!」などと、自身のギャンブル問題や借金問題を「子どもが嫌い」というふうに問題をすり替え、さらには問題が周囲に知られないように隠蔽することを強要します。
嘘の上に、さらに嘘で塗り固めることを、子どもに学ばせ、さらには強要する。まさに、毒親だからこそなせる、鬼のような所業といえます。
3.責任転嫁
これは、劣等感など親自身が抱えている問題を、子どもの問題に転嫁して責めるという、なんとも卑劣で卑怯な手法といえます。
例えば、学歴コンプレックスのある親が、子どもに「100点以外は全部0点だ!」みたいなことを言って責めるみたいな…。
あるいは、親自身が抱えているギャンブルやアルコール依存の原因を、「お前がいい子にしないせいだ」なとど子どもに責任転嫁するという感じです。
こうした責任転嫁をされればされるほど、子どもは心の中に重苦しい罪悪感を背負っていくことになります。
4.放置(現実逃避)
ここまでは、親による非人道的な振る舞いについてでしたが、これは、「家族全員で問題などないかのように振る舞う」といった家族が加担しているケースが多いようです。
本当は家族全員で問題と向き合えば、解決できる可能性があるにもかかわらず、「これはもうどうしようもないことだから…」などと、最初から問題解決に取り組むことを放棄するように親が子どもに諭す(洗脳)というものです。
こんな感じで、幼少期のころから家族内部の問題を解決することを、姑息なやり方で毒親に抵抗されてきた子どもは、「自分で問題を解決する力」を育むことを阻害されているので、「自分なら何とかなる」とか「自分なら大丈夫」といった、物事の肯定的な側面や、自分の可能性に目を向けることが難しくなってしまうのです。
結果として自信を失い、不安や怖れが拡大していくということですね。
とはいえ、こうした幼少期に知らず知らずに毒親から刷り込まれていた家族のルールを客観的に振り返っていくことは、これからの人生を変革する第一歩になります。
なぜなら、これまでのルールとは違ったルールを自分に課すことが、毒親の呪いから自分を解放することに役立つからです。
ですので、親の考え方、親が作ったルールを、どんな姑息なやり方で刷り込まれてきたのか?大人になったいまでも、どんなルールを頑なに守り続けているのか?こうしたことを、しっかりと棚卸ししてみることは、あなたが新たな人生へと踏み出す上で、とても大切なステップになると思いますよ。

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次回の『「毒親の呪縛」を本気で断ち切る実践トレーニング』は2021年10月27日公開予定です。
【連載】『「毒親の呪縛」を本気で断ち切る実践トレーニング』
【1】「生きづらさ」の根本にあるものは…?私の幸せを阻む「毒親」の呪縛
【2】私は「毒親」育ちだったのか?いま、生きづらさの原因を考える30の質問
【3】親の不仲も不機嫌も「自分が悪いせいだ」と思って育った、毒親育ちの人へ
【4】毒親に言われ続けた「あなたのため」。その支配から抜け出すための、はじめの一歩
【5】わけもなく不安になる。毒親育ちが無意識の苦しみを手放すためのワーク
【6】人が怖い、居場所がない、価値がないetc…毒親育ちの持つ悩ましい感覚
【7】私は何をやってもできない人だ。毒親育ちの悩ましい思考の手放しかた
【8】だから僕は、人が怖い。毒親育ちが「生きづらい」人生から抜け出すまでの道のり
【9】離婚したのは、僕のせい?「親の離婚」で傷ついた心の癒し方
【10】それって本当に子どものため?親の「責任」と「過干渉」のボーダーライン
【11】家庭内につくられたヒエラルキー。子どもを弱者に仕立て、支配する親たち
【12】対人関係がシンドイ。側から見ると順風満帆な彼の人生が“難あり”なわけ
【13】支配的な父親に従ったエリート役員の人生が、中年期に危機を迎えたわけ
【14】父親のDVは家族だけの秘密。なぜ毒親家庭は崩壊していくのか?
【15】愛情と苦痛はワンセット。大人になっても抜けない毒親育ちの思い込み
【16】いい親子関係を築けなかった子は、友人関係や恋愛でつまずきがちなのか?
【17】親に“いい子”の期待を押し付けられた子は、なぜ人生につまづいてしまうのか?
【18】家族のからかいがイジメに。自称「ダメ人間」な彼女の、悲しい生い立ち
【19】「無条件の愛」を与えられずに育ったあなたが、心の空洞を埋めるヒント
【20】東大に行け、官僚になれ…親に命じられた“責務”を全うしたエリートの「その後」
【21】毒親の呪縛を抜け出し「自分らしく生きる」ために、今日からできること
【22】僕は、どうせ無力で無能…。自己肯定感が「ない」子どもたちの苦悩
【23】虐待する親によくある4つの特徴。なぜ彼らは子どもに手をあげてしまうのか?
【23】虐待されている子は、なぜ傍観しているだけの親を「悪くない」と思うのか?
【24】「自分は親のようにはならない」と思っていても、結局同じことをしてしまうわけ
【事例1】鬱の母と、子に頼る父。毒親と共依存していた彼女が、親子の縁を断ち切るまで
【事例2】気づけば、3度目の離婚。彼女が「ダメンズ」ばかりを選んでしまったワケ
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