怒りと向き合うための「毒親への手紙」
過去を振り返りながら、毒親への恨み辛みの事実と向き合い、いまも激しい憤りを感じているという事実にしっかりと共感し、そんな自分がいることを肯定的に受け入れていく方法としておすすめなのは、「毒親への本音の手紙」です。
実際にその手紙を出す、出さないは別にして、自分の本音を手紙を出すつもりですべてぶつけてみるのです。
手紙の構成としては、育ててもらった恩など「感謝できること」から始めて、徐々に過去に遡りつつ、辛かったこと、悲しかったこと、悔しかったこと、絶望を感じたこと、辱められたこと、傷ついたこと、怖かったこと…。そうした、当時は言えなかった、癒やされていない本音を過去のエピソードに沿って書いてみるのです。
これまでのクライアントの例でいえば、ノート1冊分以上書いた人もいれば、便箋で5〜6枚くらいの人もいらっしゃいました。
この手紙の目的は、過去を振り返りながら、これまで抑圧してきた毒親への恨み辛みや恐怖を内包している自分と向き合い、いまも引きずっているという事実をしっかりと共感しながら受け止め、そんな自分を肯定的に受け入れていくことです。
なので、「私が内心こんなことを思っていると親が知ったら、親はどう思うだろう…」「こんなことを書いたら親不孝ものだと思われそう…」「こんなことを書く私は、なんて親不孝者なんだ…」「いまさら昔のことを書いても…」などと、自分を責めたり、親を庇うようなことを考える必要はありません。繰り返しますが、目的は「抑圧された本音」を解放することです。
別な表現をするなら、「抑圧され孤立しているインナーチャイルドを、いまの自分に統合すること」です。ですから、「ありのままの本音」を素直に、集中して書き出してみましょう。
なお、書き出す際には、ひとつひとつ丁寧にエピソードを思い出し、当時の自身が感じた本音を味わい向き合いながら書いていく必要があります。一気に書いてしまおうとするのではなく、最初から早くても数週間はかかると思って、気長に書いていくといいかと思います。
そしてすべて書き出せたという実感が持てたなら、
- 実際にポストに投函する(手渡しする)
- 面と向かって毒親に書いた内容を伝える
- 手紙(ノート)燃やしながら、灰になって消えていくとともに、心の中からもネガティブな思いが消えていくことをイメージし、手放すことを自分に誓う
- 封をして誰にもみられない場所に隠す
- ビリビリに破り捨てながら、それと同時に心の中からもネガティブな思いが消えていくことをイメージし、手放すことを自分に誓う
などなど、書いた手紙(ノート)をどう扱うかは、あとはあなた自身の自由です。
ただし、「親の反応がどうあろうと構わないし、今後の関係性がどうなろうと、私は本音を伝えることで親を乗り越える」といった心が固まっていないうちに、手紙を投函したり、直接手渡ししたり、ましてや直接会って伝えることは、くれぐれもやめておくことをおすすめします。
なぜなら、万が一、毒親の逆襲にあったとき、さらに心に深いダメージを受け兼ねませんから…。実際に毒親と対峙することについては、また別な機会にお話しします。
次回の『「毒親の呪縛」を本気で断ち切る実践トレーニング』は2021年11月10日公開予定です。
【連載】『「毒親の呪縛」を本気で断ち切る実践トレーニング』
【1】「生きづらさ」の根本にあるものは…?私の幸せを阻む「毒親」の呪縛
【2】私は「毒親」育ちだったのか?いま、生きづらさの原因を考える30の質問
【3】親の不仲も不機嫌も「自分が悪いせいだ」と思って育った、毒親育ちの人へ
【4】毒親に言われ続けた「あなたのため」。その支配から抜け出すための、はじめの一歩
【5】わけもなく不安になる。毒親育ちが無意識の苦しみを手放すためのワーク
【6】人が怖い、居場所がない、価値がないetc…毒親育ちの持つ悩ましい感覚
【7】私は何をやってもできない人だ。毒親育ちの悩ましい思考の手放しかた
【8】だから僕は、人が怖い。毒親育ちが「生きづらい」人生から抜け出すまでの道のり
【9】離婚したのは、僕のせい?「親の離婚」で傷ついた心の癒し方
【10】それって本当に子どものため?親の「責任」と「過干渉」のボーダーライン
【11】家庭内につくられたヒエラルキー。子どもを弱者に仕立て、支配する親たち
【12】対人関係がシンドイ。側から見ると順風満帆な彼の人生が“難あり”なわけ
【13】支配的な父親に従ったエリート役員の人生が、中年期に危機を迎えたわけ
【14】父親のDVは家族だけの秘密。なぜ毒親家庭は崩壊していくのか?
【15】愛情と苦痛はワンセット。大人になっても抜けない毒親育ちの思い込み
【16】いい親子関係を築けなかった子は、友人関係や恋愛でつまずきがちなのか?
【17】親に“いい子”の期待を押し付けられた子は、なぜ人生につまづいてしまうのか?
【18】家族のからかいがイジメに。自称「ダメ人間」な彼女の、悲しい生い立ち
【19】「無条件の愛」を与えられずに育ったあなたが、心の空洞を埋めるヒント
【20】東大に行け、官僚になれ…親に命じられた“責務”を全うしたエリートの「その後」
【21】毒親の呪縛を抜け出し「自分らしく生きる」ために、今日からできること
【22】僕は、どうせ無力で無能…。自己肯定感が「ない」子どもたちの苦悩
【23】虐待する親によくある4つの特徴。なぜ彼らは子どもに手をあげてしまうのか?
【23】虐待されている子は、なぜ傍観しているだけの親を「悪くない」と思うのか?
【24】「自分は親のようにはならない」と思っていても、結局同じことをしてしまうわけ
【25】うちも、もしかして…?「毒親」と「健全な親」を見分ける決定的なポイント
【26】親のことが 憎くて辛い。大嫌いな親を許して楽になるには、どうすればいい?
【27】父や母を許せない。親に対する憎しみや怒りを手放す、あるひとつの方法
【事例1】鬱の母と、子に頼る父。毒親と共依存していた彼女が、親子の縁を断ち切るまで
【事例2】気づけば、3度目の離婚。彼女が「ダメンズ」ばかりを選んでしまったワケ
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